カラーってどうしたらうまくいく? リアルな悩みを有名サロンの先輩美容師に聞いてみよう! ――DaB OMOTESANDO 盛隆行さん

Feb 12.2021
SCHOOL

日々のサロンワークで生まれる疑問や悩み…。先輩たちはどのように解決しているのでしょうか? そこで、実際に美容師さんから集めたお悩み相談を、有名サロンの美容師さんにお聞きします!

第三回は「カラーに関する悩み」。「スピーディにうまく塗布ができない」「綺麗なペールトーンをつくる方法は?」「ブリーチをうまく提案するにはどうしたらいい?」といった相談に、DaB OMOTESANDO 店長で、カラーについて研究するDaBの「カラーラボ」に所属している盛隆行(もり たかゆき)さんからアドバイスいただきました!

Profile
DaB OMOTESANDO 店長・カラーラボ責任者 盛隆行

盛隆行TAKAYUKI MORI

DaB OMOTESANDO 店長・カラーラボ責任者

1983年生まれ、埼玉県出身。2004年日本美容専門学校卒業後、DaBへ入社。サロンワークを中心にスタッフの育成、カラー技術の向上に務め、薬剤開発にも携わる。デザイン性の高いカラーのテクニックには定評があり、お客様からの信頼も厚い。一般誌、業界誌の撮影、また全国各地でのセミナーにて活躍中。

Instagram:@mori_takayuki_

Q1:どうしたらカラー剤の塗布を丁寧かつスピーディーにできるようになりますか?

「アシスタントとしてカラーの塗布に入ることがありますが、スタイリストの先輩方のようにスピード感がありながらも丁寧な塗布ができません。これでは自分がアシスタントとして携わっている意味がないのでは、早くうまくならなきゃといつも悔しい気持ちになります。先輩からは目線が近い、塗布時の表情が一生懸命すぎるなどの指摘を受けます。毎日、言われたことを意識して練習したり、先輩方のやり方を見たりしていますが、どうしたらより効率的にスキルアップできるでしょうか?」(22歳 男性)

盛さんのアドバイス|技術向上の3つのポイントと、塗布の5つのポイントでスキルアップしよう!

塗布のテクニックはとても重要ですね。目線が近すぎるのは良くないですが、一生懸命やっている姿、僕は好きですよ。

塗布で僕が意識しているポイントは「スライスの角度と厚さ」「ハケに薬剤を取る量(幅)」「はじめに薬をのせる位置」「頭皮に対してのハケの角度、タッチの強さ」「ハケの抜き方」です。ポイントは髪質や毛量で変わることもありますが、基本的にこの5つをカラー、グレイカラー、ブリーチカラー、リタッチ幅によって調整して塗っています。特に仕上がりを左右するポイントは「ハケの角度」。ハケを立ててしまう人が多いのですが、そうすると不必要な圧がかかってしまうので、寝かせてあげましょう。仕上がりの良さのみでなく、お客様への快適性の向上にもつながりますよ。

また、僕が技術の向上に必要だと思うのは「観察力」「分析力」「記憶力」の3つの力。先輩の技術を、より深く「観察」すること。そして細かく「分析」すること。それを決して「忘れない」ことです。

先輩や周囲の施術しているのを、塗布の5つのポイントを意識して観察・分析すること。また、自分でやるときも5つのポイントを意識して行い、そのできや動きを観察・分析すること。そしてそれを、「忘れない」ように、考えなくてもできるくらいまで何度も繰り返していけば、きっと上達しますよ。

Q2: ペールトーンがうまくできません。色みの作り方のコツを教えてください

「ピンク、オレンジなどの色みが薄いペールトーンのニーズが多いのですが、ブリーチ毛にトーンの薄い色をしっかりと表現するペールトーンの色出しが苦手で、なかなか思ったようにできません。薄く作ったもので塗布してみると仕上がり時の色が逆に薄すぎてお直しになったことが1度あり、それからは『最初は濃いめで徐々に色落ちを楽しめたほうがいいですよ』と事前に説明した上で濃いめに入れる、いわば逃げのやり方をしてしまっています。どうしたらペールトーンの色をうまく出せるでしょうか? ペールトーンの色みの作り方のコツ、特にクリア剤の使い方を教えていただきたいです」(29歳 女性)

盛さんのアドバイス|青みを抑えて綺麗なペールトーンを作ろう

ペールトーン系のカラーは難しいですよね。特に暖色系の場合、薄めればなんでもペールトーンになるわけではありません。中でもレッドやピンクなどの赤み系のカラー剤は、オレンジみを消すために青みを含んでいる場合が多く、先にブリーチをするペールトーンでは、青みが出てしまいます。そのため、カラーチャートや毛束で色出しした色を参考に、青みをあまり含まない薬剤を薄めて使いましょう。10Lv以上の薬剤が青みの少ない傾向にあり、おすすめです。

または、薄いベージュやオレンジなどを使って色みを調整するのも良いですね。ペールトーンの色の濃さは好みもあると思いますが、ベースが15Lv以上で綺麗にブリーチされている場合は思い切ってクリア剤を多めに設定してみるのも良いと思います。もしクリア剤で薄めて青みが出る場合は、反対の色であるオレンジやベージュを少量組み合わせて打ち消し調整するのも一つの手です。

Q3:ワンブリーチで最大限リフトをあげるにはどうしたらいいですか?

「ブリーチオンカラーご希望のお客様に対して、お客様のご希望をできるだけお財布に負担がかからないようにワンブリーチで済むようにしたいのですが、ワンブリーチだけでのリフトがどうしても思った通りにできません。ブリーチの塗布量や放置時間なども自分なりに工夫してやっているのですが、ワンブリーチだけだと何だかオレンジみが残り、お客様と相談してオレンジみがあってもできる色みにするか、再度ブリーチをさせていただくことが多いです。どうしたらワンブリーチで最大限にリフトをあげられるでしょうか? ブリーチで外してはいけないポイントがあれば教えていただきたいです」(23歳 女性)

盛さんのアドバイス|無理なワンブリーチはNG! 的確な施術を目指そう

使用しているブリーチ剤、髪質、カラーの履歴によってワンブリーチの限界は大きく変わってきます。施術に入る前にストランドチェックなどを行い、お客様が希望しているカラーがワンブリーチで可能かどうか明確にしましょう。

施術では毛先を塗布する際にパネル毎にアルミを使用してブリーチ剤の塗布量を多くしてしっかり密閉するのが、1回で明るくしたいときのポイントです。放置時間もケースバイケースではありますが、ワンブリーチなら長くすることをおすすめします。気持ち長くする程度ではなく、かなり長めに。私の場合なら、40〜50分置く場合もあります。

ただし、仕上がりに満足していただけなかったら意味がありません。また、無理にワンブリーチに収めようとすると、結果的により時間や手間がかかってしまうこともあります。お財布に負担がかからないように! というのも分かりますが、「仕上がりやダメージを最大限考慮して的確な施術をし、それに見合った料金をいただく」ことが美容師の本来あるべき姿であり、基本だと僕は思います。

また、1回では実現できなさそうなのに「できるだけ頑張って近づけてみます」という曖昧な対応をするのはNG。良かれと思ってそのようなことを言うとお客様の期待感につながってしまい、結果できあがりが「やっぱりイメージと違う…」となってしまいかねません。ワンブリーチでは難しい場合は、最初に1回のブリーチでは実現できないこと、2回であれば叶えられるのであればそのことを明確にお伝えしましょう。もし、お客様が2回のブリーチは難しいということであれば、1回のブリーチでできる範囲で別のイメージを提案すると良いと思います。

Q4:年齢層が高めの方やブリーチワークが初めての方へのアプローチ方法を教えてください。

「今まで通常のカラーしかされたことがない方にホイルワークなどデザインカラーを提案するのですが、なかなか取り入れていただけません。他の方がやられているデザインカラーの仕上がりの写真をカウンセリング時にお見せして提案するのですが、自分が担当するゲストは30代以上の方が多いためか、またブリーチに対しての抵抗があるのか断られることが多いです。そこで現在は、ケアブリーチの安全性や利点などをまとめたPOPや、個人でスタイルブックの作成などの工夫を考えています。どうしたら、年齢層が高めの方やブリーチワークが初めての方へのアプローチがうまくできるでしょうか?」(25歳 男性)

盛さんのアドバイス|積極的な提案はGOOD! ただし提案の理由をしっかりと組み立てよう

まずはお客様にブリーチを断られる理由を、より具体的に把握できるようにカウンセリングしてみましょう。一口にブリーチに対して抵抗があると言っても、不安があるのはダメージなのか、明るさなのか、あるいは派手になりすぎることなのか様々。それによって説明するポイントや提案も変わってくるはずです。そのためには、ブリーチしたほうがいい理由を自分なりに組み立てて、お伝えすることが大切だと思います。

また、提案したいデザインや技術に囚われすぎないことも大切です。例えば、僕は「来店時よりも明るくしたい!」というお客様のほとんどに、ブリーチではなくハイライトをおすすめしています。それは全体感を明るくしながら発色も綺麗に透明感を出すために必要だと思うから。ハイライトをデザインとしてではなく、ご希望のスタイルに近づける手段として提案しています。もちろん、なぜハイライトなのかという理由もしっかりと説明します。

お客様におすすめしていきたいデザインを実際にスタッフや自分にやってみて、リアルな見本をつくるのはいい取り組みですね。僕も先輩からよく言われていましたが、提案を欠かさないことはとても大切です。僕は「前回と同じ」と言われた場合もまったく同じにするのではなく、季節や流行、似合わせなどを踏まえて何か一つ新しい提案を入れ込むようにしています。情報量の多い時代だからこそ、お客様の頭の片隅に自分の提案を常に残しておくことが重要だと思っています。そうすれば、そのうち新しいスタイルやブリーチにも挑戦してみようと思ってもらえる可能性が上がると思いますよ。

Q5:どうしたらカラーの仕上がりの写真をうまく撮れますか?

「ここ最近は、カウンセリングの際にお客様が見せてくる希望のスタイルがInstagramにあがっているスタイルが大半なので、自分もInstagramでデザインを発信したいと思っています。カラーの選定には自信があるので仕上がり時はお客様も喜んでくださるのですが、写真で撮らせていただいたときに見ると、Instagramで支持されている美容師さん方のものと比べて何かが違うなといつも感じてしまいます。スマホで仕上がりの写真を撮る際のコツなどありますか? また写真に撮る上で、仕上げの際に徹底していることがあれば教えていただきたいです」(32歳 男性)

盛さんのアドバイス|自然光でスタイリング剤は少なめがおすすめ

季節にもよりますが、僕は、色も質感も綺麗に見える自然光かつ直射日光が当たりすぎない環境で撮るようにしています。ただ、自然光の場合は毛先のパサつきなどが逆に目立つこともあるので、ストレートスタイルの場合は軽くアイロンを入れるなどスタイリングをして綺麗にしています。

スタイリング剤は、ウェットスタイリング以外は極力少なめがおすすめです。スタイリング剤をつけると髪の質感が変わり、暗く見えがち。特にブリーチカラーなどはスタイリング剤の種類や量などによっては毛先が沈んで見えたりするので注意が必要です。色を見せるときはサラサラで軽い質感の仕上がりのほうが綺麗に見えますよ。ただし、ウェットスタイリングはスタイリング剤を使わないと実現が難しいので別。何を見せたいかを考えて判断しましょう。

失敗を恐れるな! 盛さんの考えるカラーで大切なこと

最後に、カラーで悩む美容師のみなさんに、盛さんから応援メッセージをいただきました。

「カラーは答えのない技術です。もちろん、今回紹介した意識するべきポイントをはじめ、大枠のセオリーはあります。でも、色の作り方はいろんなやり方がありますし、いつもと違う工夫をしてみたときに思いがけない良い色に出会うこともあります。だから、一度良い色ができたからとそればかりを使っていたら、そこで成長も止まってしまいますし、もったいないですよね。

カラーを続けていると時には失敗することもあると思うけれど、失敗を恐れてはいけません。常に新しいものを求めて工夫や挑戦を続けてくださいね」(盛さん)

(取材・文/A PRESS編集部、イラスト/MITAINA PRODUCTION