若手とのコミュニケーションって、どうしたらうまくいく? リアルな悩みを有名サロンの先輩美容師に聞いてよう!――DaB鯨岡有樹さん

Jan 22.2021
SCHOOL

日々のサロンワークで生まれる疑問や悩み…。先輩たちはどのように解決しているのでしょうか? そこで、実際に美容師さんから集めたお悩み相談を、有名サロンの美容師さんにお聞きします!

第二回は「若手の教育に関する悩み」。「どうしたら若手のモチベーションを上げられるのか」「20代とうまくコミュニケーションをとるには…?」といった相談に、DaB OMOTESANDO トップスタイリストで、教育責任者でもある鯨岡有樹(くじらおか ゆうき)さんからアドバイスいただきました!

Profile
DaB OMOTESANDO トップスタイリスト、副店長、教育責任者 鯨岡有樹

鯨岡有樹YUKI KUJIRAOKA

DaB OMOTESANDO トップスタイリスト、副店長、教育責任者

1983年生まれ、東京出身。2006年ベルエポック美容専門学校卒業後、DaB入社。サロンワークを中心に、パーマラボの中心メンバーとして、アシスタント教育、技術教育の向上に携わる。トレンドとライフスタイルに合わせた大人のおしゃれ感を大切に、カジュアルからモードまで、幅広いデザインを提案している。また、パーマスタイルには定評があり、外国人の癖毛のようなラフなウェーブからデザインパーマまで、髪質にあった「フィットデザイン」を得意としている。

Instagram:@dab_kujira

Q1:どうしたら若手のスタイリストのモチベーションをあげ、向上心を持ってもらえるでしょうか?

「デビューしてすぐの若手スタイリストに、ガツガツさ、必死さが足りないと感じています。例えば、自分の指名予約が少なくても焦ることもなく、それでは良くないと声をかけてもイマイチ行動にはつながりません。どのように若手スタイリストのモチベーションを上げ、成果を出すことの必要性を伝えればいいでしょうか?」(32歳 男性)

鯨岡さんのアドバイス|サロン内での役割を与え、若手が自分から「必要性」に気付けるようにしよう!

お店の中でのポジションと役割を与えてみるのも、若手のモチベーションを上げる一つの方法です。あまり動けていない人の中には、自分がサロンにいる意義を感じられず、何をすればいいのか、成果を上げる意味が理解できていないために行動につながらない場合もあります。そこで、役割を与えてお店を一緒に作っているという実感を持たせてみると少し見え方が変わってくるのではないでしょうか。

例えば、1年目のスタッフの技術を見る役割などが入りやすいと思います。先輩として1年目の教育に携わることでサロン内での存在意義も感じやすくなります。人に教えるには、自身が技術を身につけて成果を上げなければ説得性がないので、後輩に伝えようとすれば自ずと自身の技術と成果の向上へ意識が向くでしょう。また、モチベーションが上がらないのは「自分が思っていたより結果が伸びない」という理由も考えられます。これも後輩に教えるにあたり自身の技術を見直し、向上させようとしていくうちに、気がついたらクリアできるでしょう。

スタイリストとして働く以上は、責任をより強く持った言動が大切だと、私は考えています。何の行動もとっていない人へお店の何かを任せるという勇気も、スタッフ教育において必要な要素です。そして何より重要なのが、先輩スタイリストがどれだけ仕事を“義務”ではなく楽しんでバリバリやっているか、その環境をサロンとして作っているか。サロン全体にその雰囲気があれば、若手が自身で必要性を感じたとき、伸び伸びと挑戦と成長をしやすいのではないでしょうか。

Q2:教育における後輩とのいい距離感を教えてください。

「私は見た目が幼いためか、後輩たちがやけに馴れ馴れしく、人によっては『〇〇ちゃん』と呼んでくることもあります。職場が楽しい雰囲気であることはいいと思うのですが、先輩というより友達感覚で接してくるのは良くないのでは…と思っています。一方で、後輩たちとの関係性を悪くしたいわけではありません。節度ある距離感を保つためには、どうしたらいいでしょうか?」(23歳 女性)

「私はお店の正社員の女性では一番年上なので、気付いたことなどを逐一指摘するようにしていますが、後輩から明らかに怖がられているのを感じます。普段の会話でも後輩たちの返事はそっけなく、後輩たちから私に話しかけてくることはほぼありません。厳しく言わないようにも意識していますが、後輩たちの目線に合わせ過ぎてしまうと仕事の基準が低くなってしまうような気がして悩んでいます」(28歳女性)

鯨岡さんのアドバイス|お店では職場の関係を。時には厳しく指摘し、その後どれだけ見てあげるかが重要!

仕事で出会っている以上、職場の関係をはっきりさせ、その関係を優先すべきだと思います。また、その前提をしっかりと言葉で伝えることも大切です。

もちろん、職場以外の場面では友達のような接し方でもいいと思います。しかし、職場はあくまで職場。スタッフ間が和やかなのはいいことですが、ただ仲がいいだけではその緩みがサロン全体に伝わり、お店の質のボトムを下げることになりかねません。今はまだよくても、3〜4年後にその後輩の下にさらに新たなスタッフが入ってきたとき、スタッフの関係性がより緩くなり、サロンワークの質、お客様へのサービスも低下していくでしょう。

私は、入社段階で「お店ではあくまで職場の関係」という意識を伝えています。その上で、一人ひとりが先輩としてしっかり後輩を見て、時には厳しく、あるいは指摘をすることも必要です。

一方で、厳しくしたり指摘をしたりすると、後輩と距離ができるという懸念もあるでしょう。そこで重要なのは、指摘した後。私は、ただ指摘するだけではなく、指摘したことや技術ができるようになったときにはしっかり気付いて褒め、自信を付けさせることを大切にしています。

「褒めて伸ばしたい」というわけではありません。指摘したことについてアクションを起こしたことに気付いてあげる。そしてそこからコミュニケーションにつなげる。「指摘する→気付く→それに対する会話」の繰り返しで距離感を保ち、普段の会話の量をあげていければ、後輩からも「あの先輩はしっかり見てくれている」という信頼につながるのではないでしょうか。そうして関係が築けてきたら、この先お店でどうしたいかやキャリアについてなど、一歩踏み込んだ会話もできるようになります。

また、後輩から相談を受けたときに「〜だと思うよ」など曖昧に答えてしまうと、結果的に答えが出ていないことになってしまうため、後輩は質問や相談をしなくなってしまいます。時には言い切ることも大切です。そうして「この人に聞けば何か答えが得られる」と思ってもらえれば、後輩からも積極的に声を掛けてもらいやすくなると思いますよ。

Q3:指導が響いていないと感じることが多いです。20代とうまくコミュニケーションをとるにはどうしたらいいでしょうか?

「先輩たちから何か言われてもすぐに反抗する子がいます。『その態度は良くないよ』と軽く伝えたところ、『何がいけないんですか』と反論され、思わず感情的に叱ってしまいました。それ以来、その子との関係性はギクシャクしています。感情的になってしまったことは反省していますが、伝えたこと自体は間違っていないと思っているので、どうしたら良かったのか正解がわかりません」(26歳 男性)

「後輩には『こうだからこうしないといけないんだよ』など、理由を伝えた上で優しく指導していたのですが、何度同じこと行っても同じミスをされてしまい、自分の言っていることがわかってもらえていないのかな、響いていないなと感じています。20代前半の人たちと、教育においてどのようにコミュニケーションをとればいいのでしょうか?」(30歳 男性)

鯨岡さんのアドバイス|直接伝えるだけが指導じゃない! 理由を引き出したり、他のスタッフを巻き込んだりしていろんなアプローチをしよう!

私は若手に接するとき、厳しく言うまでのリミットを決めておきます。相手の経験や内容によってリミット回数は異なりますが、目安は3回。それを超えた場合は厳しく指摘する場合もあります。ただし、厳しく伝えるときは、感情的になりすぎないよう注意が必要です。指導している中でどうしてもイラッとしたりすることはありますし、怒らなければならない場面になることもありますが、そういうときほど一言目には気をつけましょう。

ただ頭ごなしに否定して怒るのではなく、なぜ相手がそのような言動を取ったのか、その理由や考えを聞いてみます。相手の理由を聞きながら「そういう考え方だったのか」と受け止めて相手の主張とこちらの伝えたいことを咀嚼する時間を取り、その上でこちらが指摘する理由や考えを伝えましょう。伝えた後は、先ほどと同じく指摘したことに対してアクションしているか気付いてあげることも大切です。

また、自分一人で関わるのではなく、その子の先輩アシスタントも巻き込んだ指導を入れ込むのもポイントです。先輩アシスタントに伝えたい内容や意図を共有し、そこから若手アシスタントへ伝えてもらいます。より自身とキャリアの近い先輩からの話のほうがリアル感が生まれ、受け取りやすくなることもあるでしょう。さらに、先輩アシスタントにとっても後輩へ指導することが成長機会となり、関わっている人全員にとっての教育になります。

サロンワークの中で他のスタイリストやアシスタントの行動を見せて、一度指摘したことを再確認させ、改めて説明することも有効だと思います。自分でやっているだけだと気がつきにくくても、客観的に見ることで理解できることもあるからです。また、そういった会話が、サロンワーク内でコミュニケーションを増やすきっかけにもつながります。

相手のためだけでなく、お店の基準を上げお客様により良い体験を届けるため。鯨岡さんの考える若手の教育で大切なこと

最後に、サロンの若手教育において大切な視点を教えていただきました。

「指導係をしていると、つい指摘する内容が多くなってしまいますよね。指摘することはもちろん大切ですし、適切に注意できる責任感と視点のあるスタッフがいることも重要です。でも、やはり人と人なので、指摘するだけではうまくいかないということも多いでしょう。

私自身、サロンワークや若手の指導をしている中で、近年は自分の意見や思っている事を、その場で主張する子が増えてきていると感じています。その能力や意思自体はいいことですが、まだ経験が少なかったりお店の視点の理解が浅かったりすると、やはりポイントがズレていたり考えが浅かったりします。だからこそ、より丁寧にコミュニケーションをとることが、ますます重要になっているのではないでしょうか。

一方で、教育は相手のためであるのはもちろんですが、お店の基準を上げ、お客様へより良い技術とヘアデザインを提供するためにも必要なことです。若手に寄り添うのも大切ですが、その目線に合わせてお店や自身の仕事のレベルを下げてしまっては本末転倒。お店全体で常に意見交換をして意識をそろえ、経営陣など上の立場からメッセージングするなど、一対一だけでなくサロン全体で関わっていくことも必要だと思います」(鯨岡さん)

(取材・文/A PRESS編集部、イラスト/MITAINA PRODUCTION

先輩美容師に聞いてみよう!(DaB)