店販って、どうしたらうまくいく? リアルな悩みを有名サロンの先輩美容師に聞いてみよう!――DaB角谷えり子さん

Dec 23.2020
SCHOOL

日々のサロンワークで生まれる疑問や悩み……。先輩たちはどのように解決しているのでしょうか? そこで、実際に美容師さんから集めたお悩み相談を、有名サロンの美容師さんにお聞きします!

第一回は「店販に関する悩み」。「どうしたら提案の引き出しを増やせるの?」「ネットではなくサロンで購入してもらうには?」「押し売りにならないようにするにはどうしたらいい?」といった相談に、DaB OMOTESANDO トップスタイリストで、店販商品について研究するDaBの「プロダクトラボ」に所属している角谷えり子さんからアドバイスいただきました!

Profile
DaB OMOTESANDO トップスタイリスト、プロダクトラボ所属 角谷えり子

角谷えり子ERIKO KAKUTANI

DaB OMOTESANDO トップスタイリスト、プロダクトラボ所属

岡山県出身。2003年 資生堂美容技術専門学校卒業後、DaB入社。サロンワークを中心に、スタッフの育成、指導を務める。雰囲気のあるショート・ボブには定評があり、ナチュラル・モード・フェミニンなど幅広いジャンルをこなす。お客様のライフスタイルや世界観、ファッション感に合わせたヘアデザインで、再現性が高く、女性らしさと少しエッジの効いたモード感をMIXさせたスタイルを得意とする。

Instagram:@dab_kakutani

Q1:どうしたら提案の引き出しを増やし、複数のお客様に同じ商品をおすすめできますか?

「商品を紹介する際の言葉のレパートリーが少なく、困っています。あるお客様(Aさん)に店販商品をおすすめした後、お隣の席の別のお客様(Bさん)に同じ商品をおすすめしようとすると『これ、さっきAさんにもおすすめしたな……同じことを言っていると思われないかな』と考えてしまい、結局Bさんには何も言えないことがあります。どうしたら提案の引き出しを増やせるでしょうか? また、同じ商品を違う方に提案する際の注意点を知りたいです」(23歳 男性)

角谷さんのアドバイス|まずは商品をしっかり分析して、自信を持ちましょう!

本当に自分がいいと思っている商品であれば、お隣のお客様に同じ説明を聞かれていたとしても「先ほど他のお客様にもご紹介させていただいていたのですが、私がすごくおすすめしている商品で……」と自信を持って紹介できるのではないでしょうか。

そのために必要なのは、しっかりと商品を分析すること。内容成分や効果を理解し、「どんな商品なのか」をしっかりと把握しましょう。成分について細かなところまで全部を暗記する必要はありません。お客様にお渡しするパンフレットに記載されている内容を中心に、その商品で特徴的な3大成分などを抑えておくなどでも大丈夫だと思います。さらに、例えばシャンプーなら洗浄力と刺激の強さなどのお客様がよく気になさるポイントも把握しておくといいでしょう。

そしてもう一つ大切なのが、とにかく自分で使ってみることです。さらに、サロンのスタッフにも使ってみてもらいましょう。人によって髪質やスタイル、好みが異なるので、スタッフから使用感のフィードバックをもらうことで、提案の引き出しが増え、さらにおすすめする根拠もよりリアルなものになります。また、スタッフによって言葉の表現も異なるでしょうから、ボキャブラリーを増やすことにもつながるのではないでしょうか。

商品をたくさん分析すれば、お客様へ商品を紹介するときもただその商品の説明をするだけでなく、なぜそのお客様におすすめなのか、そのお客様の髪質に合わせてお伝えできるようになります。そうすれば、お隣のお客様へ紹介した言葉とまったく同じにはならないはず。きっと、本当にいいと思っている商品でしっかり自信を持っておすすめできれば、自然とお客様に合わせた紹介ができるようになりますよ。

Q2:「ネットで見ます」と言われてしまいます…サロンで購入いただくにはどうしたらいいですか?

「近年、お客様と商品の話になっても『あとでネットで見てみます』と断られることが増えました。これまでは商品の話で盛り上がったときは『〇〇さんがいうなら』と購入につながっていたのですが、最近では今まで購入してくださっていた方にまで『ネットで』と言われます。単純にネットよりもサロン購入の方が価格を安くするという安易な発想はしたくないと思っていますが、サロンで購入する意義を感じていただくにはどうしたらいいものか……と悩んでいます」(28歳男性)

角谷さんのアドバイス|「プロフェッショナル」である信頼感を得られるように、特性やおすすめ理由を伝えましょう!

近年は、ネット購入の流れはある程度避けられなくなってきています。もしお客様がそうおっしゃる理由が値段なのであれば、「仕方ないな」と落ち込みすぎないことも必要かもしれません。

ただし、商品のメリットが伝わりきっていなくて考える時間がほしいから「ネットで」とおっしゃっている可能性もあります。そのため、「あとでネットで」と言われた場合も、「ご自宅でご購入いただいてケアされるときの参考に」と、商品の特徴やなぜそのお客様におすすめなのか、使い方をお伝えしましょう。そうすれば「このサロンのものは“本物”の商品である」という信頼につながります。

サロンとして“本物”の商品だという信頼を得られれば、最初はネットでと考えていた方もその場で購入して今日から使おうと思われる可能性もあります。変わらずネットで購入なさるという場合でも、「このサロンはしっかり説明してくれる」という信頼につながり、リピートやサロンメニューの利用など店販以外の部分でプラスになるかもしれませんよね。

サロンで扱う商品を自身で決められる場合は、ネットでの取り扱いが少ないアイテムをラインナップするのも一つの案です。常に新商品を導入してネットで出回る前に知名度を上げれば、ネットでは新商品はまだ安くなっていないと思われるので、値段を気にされてネット比較をしたいという方であってもサロン購入につながるかもしれません。また、サロンならではの商品を扱っていることも、やはり「このサロンのものは“本物”の商品である」という信頼につながるでしょう。

Q3:どうしたらお客様が負担に感じることがないように、複数の商品を同時にご提案できますか?

「複数の商品を同時にご提案するのが苦手です。どうしてもお客様のお財布を気にしてしまい、『こんなに一度にすすめて、嫌な気持ちにならないかな』と罪悪感を覚えてしまいます。一方で、例えばシャンプーをご購入されるお客様には、本来はそれに合うトリートメントも提案できるのがいいのだと思っています。でも、『自分からご提案するんだ』と思えば思うほど勇気が出ずに何も言えなくなってしまいます」(22歳 女性)

角谷さんのアドバイス|本当にいいものをすすめた上で、お客様の状況に合わせて優先順位をつけてあげましょう!

お客様が負担に感じるかも……と思ったらおすすめしにくくなることも、ありますよね。でも、複数商品か一つの商品かに関わらず、お客様の髪を美しくするためにいいと思うのであれば、まずはしっかりその理由を含めてどんな商品であるかをお伝えするべきだと思います。その上で、購入するかどうかはお客様が決めるのがいいでしょう。まず何がいいのかを知っていただくことが、購入する・しないに関わらず、お客様の納得したご選択につながります。

その場ですぐ売ろう、すぐに結果を出そうとは思う必要はありません。「ぜひ使ってみてください!」と強要してしまうと、それは押し売りになってしまいます。「そういえばこんな説明してもらったな」と後で思い返してもらえるくらいにしておくので十分。気になって頭に引っかかっていれば、お客様からも聞いてくると思います。それが、次回の購入につながる可能性もあります。

また、例えばシャンプーとトリートメントをセットで紹介したときに、お客様が「2つは……」と悩まれた場合は、「値段的に厳しいですよね」などお客様の立場やお悩みもしっかり考えて会話しましょう。その上で「でも、もし使うならまずはこちらから使ってみてください」と、優先順位をつけてお伝えできるといいですね。

会話の中でお客様のライフスタイルを知ることも忘れずに。角谷さんの考える店販で大切なこと

最後に、なぜ美容師にとって店販は大切なのか、そして店販において大切な視点を教えていただきました。

「髪をよりよくするには、サロンだけでなく日常のケアも大切です。店販商品はそのために使うもの。きっと皆さん『これと、これは絶対使ったほうがいい』というものがあると思います。それをしっかりお客様にお伝えした上で、お客様が納得してくれるような導き方をできるといいのではないでしょうか。

また、店販商品をおすすめするには、商品だけでなくお客様について知る視点も忘れないようにしましょう。ワックスを使う方なのか、オイルを使う方なのか、洗い流さないトリートメントを使う方なのかなども、性格やライフスタイルによって一人ひとり違います。そういったお客様の生活も会話の中で知っていき、それを覚えていた上で説明するといいでしょう。それが、『自分に本当にいいんだ』というお客様の納得感にもつながると思いますよ」(角谷さん)

(取材・文/A PRESS編集部、イラスト/MITAINA PRODUCTION