美容師×異業種のコラボが生み出す、新たなシナジー。「ウルトラシナジー」初開催への想い
11月19日、東京・国立代々木競技場第一体育館で「アリミノ ウルトラシナジー 2024」が初開催されました。このイベントは、美容師と異業種のクリエイターがコラボレーションし、今までにないインスピレーションを得て、次の時代を切り拓いていく想いを込めた新感覚のヘアショーです。
今回参加したのは、DaB、QUQU、SNIPS、PEEK-A-BOOの4サロン。それぞれが自ら選んだミュージシャンやダンサーとともに、ヘアデザインとパフォーマンスを融合させたステージを披露しました。
なぜ「ウルトラシナジー」というイベントを開催したのか? テーマの「シナジー」に込めた想いとは? 今回は、プロジェクトチームのメンバーに、イベント開催の背景や想いについて伺いました。さらに、記事の後半では、4サロンがヘアショーを通じて表現した「シナジー」についても紹介します!
美容師と異業種クリエイターのコラボで生まれる新たな世界観に期待
―― まず、「アリミノ ウルトラシナジー 2024」について教えてください。
マーケティング部:「ウルトラシナジー」とは、美容師と異業種のクリエイターがコラボレーションして新しい世界観を創り出す、今までにない新感覚のヘアショーです。今年で19回目を迎える美容学生向けのコンテスト「フューチャーズロード」と共催する新しいイベントで、これまでとは違う新感覚の試みとして位置づけています。
―― 開催に至った経緯を教えてください。
マーケティング部:「ウルトラシナジー」のプロジェクトが立ち上がったのは、2023年の春頃なのですが、新型コロナウイルスの影響で、ヘアショーなどのイベントがここ数年できていなかった背景があります。そういった中で、「そろそろ動き出してもいいのではないか」という社員の声を受け、他社さんのイベントとの差別化も意識しながら、アリミノらしい形を模索した結果、「ウルトラシナジー」を開催することになりました。
―― どのようなイベントにしたいと考えましたか?
営業部:今回の「ウルトラシナジー」は、いわば「ゼロ年目」。立ち上げにあたって考えたのは、「アリミノがこの先、どう進んでいくべきか」という点でした。2026年にアリミノが80周年を迎える中で、未来に向けた変化や成長は欠かせないと思いました。さまざまなイベントが行われている中で、独自性のあるイベントをゼロからつくっていくことは簡単ではありませんが、今年は、これまでのアリミノの文化に新しいイメージや新しいコンセプトを取り入れることから挑戦しました。
マーケティング部:「フューチャーズロード」には、約2000人の美容学生の方がオーディエンスとして集まります。なので、まずはその方たちが「楽しい」「カッコいいな」と感じられるショーを目指しつつ、美容師さんから一般の方にも楽しんでいただけるものにしたいと考えました。また、国立代々木競技場第一体育館という大きな場所を生かし、より多くの方に集まっていただけるよう、従来のヘアショーとは全く異なる、新しい試みにしたいとも考えていました。
―― その「新しい試み」として、美容師×異業種の方とのコラボによるヘアショーという形が誕生したんですね。
マーケティング部:そうですね。「シナジー」とは、お互いが協力することで生まれる「相乗効果」のこと。美容師と異業種の方たちが一緒になって世界観を創り上げていく、新しい形のヘアショーをすることで、今までにないおもしろさやインスピレーションが引き出せることを期待しています。
―― ちなみに、「美容師と異業種の方がコラボする」という発想は、どこから来たのでしょうか?
マーケティング部:アリミノは以前から、「美容業界から外の世界へとコミュニケーションを広げていく役割を担う」という文化を大切にしてきました。たとえば、2000年から発行していた、アリミノのコンセプトマガジン「FA」(現在は休刊)では、美容師以外のアーティストやクリエイターに焦点を当ててきました。誌面を通じて、「美容師さんの感性や美意識を刺激するきっかけや一助になりたい」という想いがあったんです。こうした、これまでの取り組みが「ウルトラシナジー」の着想につながりました。
良いイベントにしたいという想いは共通。でも価値観を合わせていくことは難しい
―― 新しいイベントを企画するのは大変だと思うのですが、イベントの立ち上げが決まり、コンセプトを練り上げる際の話し合いはスムーズに進めましたか?
マーケティング部:まずは何のために新しいイベントを開催するのか、そしてコアターゲットをどこに定めるかについては、回数を重ねて議論しましたね。
営業部:そうですね、スムーズとはいかなかったですね。日頃からお世話になっているお客様や若い社員と話をしていると、「アリミノのこれまでのイメージを一新するようなイベントにするのはどうか?」といった声もありました。やはり、社員それぞれ価値観や立場が異なりますし、美容師さん側の想いもある。そこをどう合わせていくかは、大きな課題でしたね。
―― 今回のイベントについて、美容師さんはどのような反応でしたか?
営業部:今年初開催のイベントなのでイメージがしづらくて、案内をし始めた頃の反応は、正直薄かったと思います。ただ、「アリミノが新しいことを始める。業界としても新しいことを発信していきたい。その第一歩として今回こういう企画をやろうと思っている」「ずっとアリミノという会社を知っていただいているお客様に、僕らが少しでも新しいことを発信しようとしている姿勢を見ていただきたい」という想いを伝えました。すると、そこに賛同してくれる美容師さんが非常に多く、集客につながったと実感しています。そして、今年のイベントを観ていただいたお客様を中心に「来年はどんな感じになるんだろうな」というワクワク感をつくれたと思いますので、来年以降はもっと多くの方に足を運んでいただけるようさらに盛り上げたいと考えています。
営業部:今回、出演いただく美容師さんからは、「より多くのオーディエンスに伝わるようなヘアショーにするにはどうしたらいいか」という点で、今までとは異なる新しいチャレンジとして捉えていただけたと思います。もちろん今までもいろいろな会場でヘアショーをやってきている方々ですが、その中でもダントツで大きな会場なので。
業種、年齢、性別を超えた自由な発想のコラボレーションが見どころ
―― イベントを準備するにあたって、どのような工夫をしましたか?
マーケティング部:「ウルトラシナジー」の大きな特徴は、出演者の年齢や性別などに制約を設けなかったことです。コアターゲットは美容学生や若手美容師ということで、若い出演者に絞るという選択もありましたが、あえてそういう制約を外しました。若い方からベテランの方、性別を問わず。そういった多様性の中でこそ、生まれるシナジーがあると考えたからです。
マーケティング部:また、出演者の方々に「シナジーとは何か?」という質問を事前に投げかけ、その回答をもとにオープニングムービーを制作しました。これにより、オーディエンスの方にも「このステージはシナジーを通じて、新しい価値を生み出す場だ」というテーマがしっかり伝わるよう工夫しました。「最終的に何を伝えたかったのか」「どんな意図で作ったのか」が、曖昧なまま終わってしまうことは避けたかったので、「ウルトラシナジー」では、コンセプトや意図をしっかり発信することを意識しています。
営業部:美容師さんと有名クリエイターの方がコラボした際、誰とコラボしたのかあまり分からず、結果的に「すごい人だったらしいよ」で終わってしまうこともあると思います。そこで今回は、「こういった方々と、こういう演出をする」というプロセスから発信しています。これにより、コラボレーションがどのようなステージにつながるのか、というふうに見方も変わってくるのではないかと期待しています。
―― 美容師さんがコラボレーションする相手は、どのように決めたのでしょうか?
営業部:僕たちがフィルターをかけすぎて、柔軟な発想を阻害するということはしたくなかったので、「どんな業種の方でもいいですよ」とお伝えし、美容師さんご自身に選んでいただきました。親和性が高いのは、ミュージシャンやダンサー、ファッション関係だと思いますが、制約がない分、今後は「ウルトラシナジー」を体験した美容師さんや学生が「自分ならこうする」とアイデアを膨らませていけるものになると考えていますし、より自由な発想で発展していってくれればいいなと思っています。
美容業界の発展のため、美容師が「夢を描ける場所」を創造したい
―― 「ウルトラシナジー」を通して、オーディエンスにどのようなことを伝えたいですか?
営業部:「ウルトラシナジー」が美容師さんにとって、「夢を描ける場所」という位置付けになってほしいなと思います。
営業部:最近は18,000人前後の人が、毎年美容師免許を取得しています。さまざまな産業がある中で、多くの方が美容師を選んでいるという事実は、とても尊いことだと思います。その人たちが「美容師になろう」と思った時に、夢を大きく描けるような環境を作りたい。特に、学生から入社3年目くらいの時期に、どんなインプットをしていくかが、その後に大きく影響すると思うので、「ウルトラシナジー」が、夢を育み、美容師としての未来を広げる第一歩になれば嬉しいです。
マーケティング部:次回は2025年10月21日(火)、同じく国立代々木競技場第一体育館で開催を予定しています。新たな「シナジー」にご期待ください。
「ウルトラシナジー」に込めた想い—出演者4名のメッセージ—
DaB MUUT/クリエイティブディレクター 河原木佑弥さん
今回のヘアショーを通して、音楽をベースにそこからどういう女性像を描くかというところを、表現者として一つの形にできたら良いかなと思いました。いろんな音が入ってくるんですけど、入ってくる音を、自分なりにヘアの質感や、ディティール、シルエットといった形で、僕自身は「ヘア」として表現していくことを考えました。また、ショーの中では、カットの瞬間瞬間で、女性像というものをいろんな角度、視点で表現しています。
QUQU /クリエイティブディレクター 楽人さん
今の自分が1番かっこいいと思うものとか、今表現したいものっていうのを表現しようかなって思っていました。それをさらに拡張させてくれるコラボレーターと一緒にやっているので、僕の表現っていうのを直に感じ取ってくれたらすごく嬉しいなって思います。
若いときはヘアショーに限らずいろんなライブを見てきて、忘れられないステージっていうのが何個もあって。今もそのステージを超えたいっていう原動力のもと、いろんなお仕事をさせてもらっているので、若い方には若いうちにいろんなものを見て、吸収して、それを超える挑戦をしたり、それをリスペクトして何か新しいものを作ったりしてほしいなって思います。
SNIPS /グループオーナー 由藤秀樹さん
今回テーマにした「グローカリゼーション」という言葉は造語で、いろんな地域から生まれたものが、実は都市や世界で役立つ。そういうコンテンツを生み出していけるんじゃないか、みたいなところで、今回「CHIBI UNITY」さんとユニットを組みました。お互いにいろんな地域で活動していますから、そういったものを中央の皆さん方に役立てていただけたらいいかなと考えています。
美容でいうと、我々は中央の都市よりも少子高齢化っていうのをダイレクトに受けている地域です。これからの新しい100年時代において、女性が年齢を重ねてもかっこよく生きている姿を見て、世界中の人生の先輩たちが「日本人のようになりたい」と思っていただけるような、そういうかっこいい「ビューティ」をここから生み出して全世界に発信できたら楽しいかなと思っています。
PEEK-A-BOO /取締役副社⻑、ArtDirector 堀内邦雄さん
僕がコラボレーション相手に選んだのは、バークリー音楽大学の教授でもあるLee Abe氏です。その中で、もう一人「音のスタイリスト」と呼ばれるLoudon Stearns氏とのユニットを組んでいただき、コラボレーションしていただきました。
本当に単純に、「美容の楽しさ」っていうのを伝えていきたいんですけれども、サロンワークって、割と地味な部分もあるじゃないですか。それを我々が、新しい異次元のステージへと昇華させることで、より美容のクリエイションに対しても楽しんでいただけるようなイメージを持ちながら、美容の魅力というものを伝えたいなと思います。
ウルトラシナジー
2024年11月に初開催された「ウルトラシナジー」は、美容業界の未来を形作るための、今までにない新しいイベントです。ジェンダー、過去と現在、自然とテクノロジーなど、あらゆる境界線を超えて、新たなシナジーを生み出します。
ヘアショーでは、個性豊かな出演者と異業種のクリエイターが出会い、美容の枠を飛び越えた革新的なコラボレーションを展開します。従来の枠組みにとらわれることなく、新しいインスピレーションを提供し、次の時代に向けたビジョンを共に描いていきます。
次回はどんなイベントになるのか期待してください。
(取材・文/池山章子、編集/A PRESS編集部)
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