髪のお悩み解消も、劇的イメチェンも自由自在だから「パーマって楽しい」。NARVIS水舟勝己さんに聞く、パーマ文化を広めるために、美容師がすべきこととは
一度の失敗がきっかけでパーマをためらってしまうお客様や、パーマ施術に苦手意識を持つ美容師はまだ多く、お客様にとっても美容師にとっても、パーマは「ハードルが高い」と思われがちです。
今回取材する水舟勝己(みずふねかつみ)さんは、2021年に岡山で「NARVIS」を開業し、「パーマは髪の悩みを解決するコンプレックスサポート」と位置付け、一人ひとりの髪悩みに寄り添ったパーマスタイルを提案しています。NARVISのパーマメニューの施術比率はサロン全体で4割、水舟さんの施術は6割にのぼり、県外や海外からのお客様が訪れるほどの支持を集めています。
水舟さんは、パーマスタイルの土台である「ベースカット」やお客様の髪のお悩みを引き出す「カウンセリング」などを大切にしています。そこで今回は、水舟さんがパーマスタイルをつくる際に大切にしていることや、導入されている「コスメカール プリズムプラス」や「クオライン」の特長や魅力について伺いました。
ベースカットがパーマデザインの仕上がりを決める
―― それではまず、最近のパーマスタイルの傾向やトレンドについて、教えていただけますか。
水舟さん(以下敬称略):現在は、毛流れパーマとスパイラルパーマが人気だと思います。
毛流れパーマは、顔まわりにゆるやかな毛流れを出したようなパーマで、アイロンで顔まわりの髪を流している方には、毎日アイロンをかけるよりも圧倒的にダメージが少ないのでおすすめしています。
スパイラルパーマは、以前、セミドライな質感の外国人風スパイラルパーマが主流でしたが、今はツヤと動きのある「ゼリーパーマ」や「クルムパーマ」といった韓国風スタイルがトレンドです。特徴としては、中間は軽めですが、毛先のカットラインは重いスタイルで、ハサミの入れ方や使用するスタイリング剤の種類なども、従来の外国人風スパイラルパーマとはまったく違います。
―― スタイルに合わせて、カットやスタイリングの方法も工夫が必要なのですね。パーマスタイルにはどのようなカットが求められるのでしょうか?
水舟:パーマスタイルは、しっかり意図を持ったカットと巻き方との連動が大事だと思います。
例えば、毛先が軽いとそこにパーマがかかりすぎてしまうので、毛先のカットラインは重めに残すようにしています。その分、中間・根元付近は軽くして動きを出す。また、毛先にパーマがかかりすぎると髪が傷むという問題点もあるので、そういった意味でも、毛先には重さを残しておきながら根元から中間を軽くするようにしています。
―― パーマスタイルの完成度を高めるには、パーマの前のベースカットが重要ということですね。
水舟:そうですね。基本的にパーマはベースのカットがしっかり決まっていないとうまく仕上がらないんです。カットで「似合っていないかも」という状態で、パーマをかけても大体うまくいかない。理想は、カットだけでも「似合っている」状態。それができて初めて、パーマが良い仕上がりになるんです。こういったベースカットへのこだわりが、パーマをマスターする第一歩だと思います。
髪の履歴はどんどん複雑化するから、しっかりとした下処理と薬剤の選定が重要
―― 最近のパーマ人気についてはどう思われますか?
水舟:僕の把握している限りですが、メンズパーマは増えていると思いますが、レディースのパーマは横ばいか、もしかしたら減っているのかもしれないと感じます。
―― それはなぜだと考えますか?
水舟:やはりパーマによる傷みを気にされるお客様は多く、パーマ離れというのもそこから来ていると思います。過去に一度でもパーマで髪が傷んでしまったり、毛先が縮んでしまったりした経験のある方は、パーマへの抵抗感があると感じますね。特に今は、ブリーチやハイライト、酸性ストレートをしているなど、髪の履歴がどんどん複雑になってきている。基本的に、この3つの履歴のある髪はパーマがうまくいかないことも多いのですが、失敗すると「やっぱりパーマは髪が傷む」と思われ、失客につながってしまいます。
―― 髪の履歴が複雑だけどパーマをかけたいというお客様がいらした場合、パーマをお断りすることもあるのでしょうか?
水舟:僕はパーマをかけますね。その代わり、処理剤をしっかり使用します。その上で、ロッドの選定と巻き方が重要です。同時にダメージレベルの見極めをしっかりとして薬剤を選定することも大切。例えば、バージン毛や新生毛には少し強めの薬剤を、逆に数回カラーをしている髪には、よりダメージに配慮した薬剤を使うなど、お客様の髪質や履歴に合わせて対応しています。
ただ、最近のお客様の髪の履歴は先ほどお話しした複雑履歴よりも、もっともっと複雑なんですよね。髪の束の中に真ん中だけブリーチが入っているなど。その場合、1部分だけ薬剤を変えるというのは物理的に難しいので、慎重に薬剤選定をするようにしています。
―― ダメージレベルの見極めは、どのようにしているのでしょうか?
水舟:過去にパーマをした時にどうだったか、お客様に必ず聞くようにしています。経験がある美容師であれば、髪の毛を触ればダメージレベルが分かると思うのですが、それは経験があってこそできること。なので、自分の経験や知識だけに頼るのではなく、きちんとカウンセリングをするよう、サロン全体でも取り組んでいます。こうすることで経験が少ない美容師でも失敗しにくくなると思います。
また、カウンセリングではダメージの見極めだけでなく、お客様が普段感じているスタイリングのお悩みも聞くようにしています。なぜなら、パーマというものは髪のコンプレックス解消になるからです。パーマをかけることで髪にボリュームや動きを加えられるため、普段のスタイリングがしやすくなり、髪のお悩みを軽減する手助けができます。
―― 実際、スタイリングに悩んでいるという理由からパーマスタイルにされる方は多いですか?
水舟:そうですね。僕のお客様を見ていると、パーマスタイルを希望される方は年齢問わず、スタイリングに悩んでいる方が多いです。まだパーマをかけたことのないお客様にも「髪のお悩みに対してこういった改善策もある」というようにパーマを提案すると、パーマを選んでいただけることは多いですね。
―― なるほど。先ほど、「パーマ離れ」という言葉があがりましたが、パーマ比率を増やすためには、どうしたら良いと考えられますか?
水舟:パーマ施術において、スタッフ間で技術のムラが生じることが課題だと感じています。特に、技術が未熟なスタッフほど「パーマは難しい」と感じ、パーマに抵抗感を抱いていると思います。そこで、現場経験の豊富な美容師が基準となり、すべてのスタッフが同じ水準で技術を提供できるようにするために、標準化された技術の「マニュアル」を整備することが重要だと考えています。
また、スタッフのパーマの成功事例を増やすことも重要です。成功体験が増えることで、「新しい提案やスタイルに挑戦してみよう」と前向きな気持ちになり、より意欲的に取り組むようになると思います。お客様への提案に自信を持てるようになることで、パーマに対する心理的なハードルも自然と下がってくると思います。
髪質や履歴、デザインによって「プリズムプラス」と「クオライン」を使い分け。ハイダメージ毛には「シェルパ」を2度に分けて使用してしっかり潤いを補給!
―― コールドパーマとホット系パーマは、どのように使い分けていますか?
水舟:お客様の髪の状態や希望のスタイリングに合わせて使い分けています。コールドパーマは根元からしっかりパーマが欲しい方、直毛の方におすすめですね。逆にホット系パーマはどんな髪の方にもおすすめですが、根元からはかけられません。また、軟毛・細毛の方はもともとの髪の毛のハリやコシが少なく、タンパク質も少ないので、ホット系パーマをおすすめすることが多いですね。
あと、普段からコテで巻いているお客様にはホット系パーマをおすすめしています。コテでのスタイリングは髪が傷みますし、その日によってカールの形も変わってしまう。パーマを一度かけてしまえば、毎日のスタイリングが圧倒的に楽になるので。
―― では、コールドパーマの薬剤として使用している「コスメカール プリズムプラス」はどのような点が使いやすいですか?
水舟:「コスメカール プリズムプラス」はスタイルを作る上で、ツヤ感やリッジがしっかりしたパーマをデザインできる点が使いやすいです。髪にハリも出て、弾力感のあるくっきりとしたカールに仕上がる。髪質やデザインを問わず、オールジャンルに使えるので、とても優秀な薬剤だと思いますね。
―― ホット系パーマでは「クオライン」を使用していらっしゃるそうですね。使いやすい点を教えてください。
水舟:「クオライン」は薬剤の粘性が扱いやすくて、塗りやすいのが良いですね。髪に浸透しやすくてムラにもなりにくく、柔らかな質感に仕上がります。粘性が固すぎると髪にうまくのらないこともあるのですが、「クオライン」はそういったことがないです。
軟化のスピードが早いところも「クオライン」の優れている点だと思います。カット込みで3時間前後で施術が完了する点は、サロンワークの効率を上げるのに役立っていると思います。
―― 「クオライン」シリーズでは、どのアイテムを使用することが多いですか?
水舟:ストレートパーマでは、T-C 250※1をよく使用し、塗布してから10分で流しています。あと、毛量が多い人にはCA-T 200※2を使っています。デジタルパーマにはCA-C 130※3を使用しています。
※1 T-C 250:アリミノ クオライン T-C 250 1剤(医薬部外品)
※2 CA-T 200:アリミノ クオラインCA-T 200 1剤(化粧品)
※3 CA-C 130:アリミノ クオライン CA-C 130 1剤(化粧品)
―― ホット系パーマで特に気をつけているところはありますか?
水舟:薬剤の効かせすぎや過度な軟化に注意しています。薬剤が効きすぎてしまうと、温度設定や加温時間で調整するしかないのですが、その場合はその人の感覚を頼ることになるので、髪を適度に還元・軟化させることが大切です。
―― 先ほど処理剤をしっかり使用するというお話がありましたが、「シェルパ」はどのように使っていますか?
水舟:パーマを3回以上繰り返している方には、「シェルパ」の使う回数を変えています。ハイダメージ毛の方には2回に分けて塗布するのですが 、僕はそれを「ダブルチャージ」と呼んでいて、スタッフにも「ダブルチャージしておいて!」と指示しています。
―― ダブルチャージ! 効果がグンと上がりそうな言葉ですね。
水舟:パーマスタイルは、数本の髪の毛でも処理剤がかかっていないと仕上がりの質感が変わってしまうんです。パーマはカールの集合体なので、処理剤が十分に行き渡っていないと、当然髪が広がってしまいます。あとは、しっかり髪に潤いを与えるためにも2回使用しています。
―― 現在「シェルパ」は何種類取り入れていますか?
水舟:「ベースエイドミスト」と「ボンドメモリアリキッド」を使用しています。ダブルチャージとして「シェルパ」を使う際には、「ベースエイドミスト」と「ボンドメモリアリキッド」を塗布してドライヤーで乾かし、再度「ボンドメモリアリキッド」を塗布します。仕上がりが全然違うので、複雑な履歴や髪の傷みが気になる方は試してみてほしいですね。
パーマメニューの施術比率が上がったことで売上もサロン全体のモチベーションも向上!
―― 「コスメカールプリズム」や「クオライン」を使用したパーマスタイルは、お客様からどのような反応がありますか?
水舟:パーマによる髪のダメージを気にされていたお客様から、前より傷みが気にならなくなったという声をいただきます。先ほどもお話ししましたが、お客様がパーマから離れてしまう理由は、髪のダメージ。ですが、髪の負担が減ったことで、以前に比べ、たくさんのお客様にパーマを楽しんでいただけるようになったと感じています。
―― スタッフさんの意識や技術面での変化はありましたか?
水舟:安定した施術ができるようになり、仕事がしやすくなったと感じます。もともとパーマに対して少し苦手意識があったスタッフも、安定して結果が出せるようになり、自信がついてきました。こうした成功体験が重なったことで、パーマに対する意識もカジュアルになり、スタッフ全体で施術を楽しめる雰囲気になってきたと感じます。
―― パーマメニューの施術比率などの変化はありましたか?
水舟:パーマメニューの施術比率は、ここ4年ほどでグッと上がりました。それに比例して、自分自身はもちろん、お店全体の売上も増えています。
パーマはカットに比べて2〜3倍くらいの料金がかかるので、定期的にパーマをかけていただくことで、お店の売上も大きく変わる。2か月ごとにカットをされるお客様が2回に1回でもパーマも取り入れてくださると、年間の売上が全然違いますよね。また、売上に比例して、スタッフ全体のモチベーションも上がったと感じます。
ホームケアでお客様にパーマを長く楽しんでもらい、美容師もパーマをもっと楽しめる時代へ
―― 今後は、パーマスタイルに関してどのような展開を考えていますか?
水舟:これからは、パーマ施術後のケアも強化していきたいと思っています。近年、日差しが強く紫外線も髪のダメージに影響しますし、カラーやパーマも含め、しっかりとしたホームケアが必要だと感じます。特に、普段使用するシャンプーやトリートメントが髪に与える影響について、お客様に丁寧に説明していくことが大切だと感じています。
例えば、パーマがうまくかかっても、使うシャンプーやトリートメントの種類によっては、髪がパサついてまとまらなくなることがあるんです。そんな時、お客様が「パーマをしたから髪が傷んだ」と思い込んでしまうのは避けたい。実際には、シャンプーの選び方1つで髪の質感やパーマの持ちが大きく変わります。だからこそ、事前にヘアケアの重要性をお伝えし、お客様がパーマを長く楽しんでいただけるようにしたいです。結果的に、サロンとお客様との信頼関係にもつながると思います。
―― お客様も美容師さんもパーマをより楽しんでくれる方が増えると良いですね。
水舟:そうですね。シンプルにパーマが好きな美容師さんがどんどん増えればいいなぁとは思いますね。パーマってね、楽しいと思うんです。変化がはっきり出るからお客様の反応も良いですしね。
また、美容師の仕事は長く続けられる仕事だと思います。その中で、着実に地に足のついた仕事をしていきたいと思うなら、まずはベーシックなカットを見直して、それにプラスアルファでパーマを得意にしていく。サロンのかたちも多様化し、パーマを打ち出している美容師さん自体もカラーに比べると少ないと思うので、そう考えている美容師はチャンスだと思いますね。
水舟勝己Katsumi Mizuhune
株式会社NARVIS代表
岡山県出身。岡山県理容美容専門学校卒業後、「PEEK-A-BOO」で10年修行し、2021年に株式会社NARVISを設立。一人ひとりの骨格・髪質・毛流れを計算して創りあげるスタイルが得意で、カットやパーマでお困りのお客様から多くの支持を得ている。カミカリスマやヘアコンテストの受賞経験も多数有り。
Instagram:@karikatsu_narvis
アリミノ営業担当者のコメント
近年、韓国風パーマやメンズパーマなど様々なパーマスタイルが登場し、パーマスタイルを楽しみたいというお客様も増えてきているのではないでしょうか。その中で、NARVIS様ではパーマを「髪の悩みを解決するコンプレックスサポート」と位置づけ、1度きりの施術ではなくパーマのリピート率にも力を入れており、多くのお客様から信頼を得ています。
パーマはベースのカットも重要となるため、美容師の皆さまにしかできない技術です。また、薬剤の進化で以前よりダメージレスな施術も可能となってきました。
パーマに関するお悩みがあるサロン様は、各エリアのアリミノセールスにお気軽にお申し付けください。
名阪営業部 大阪第2支店 高以来勲
「NARVIS」サロン情報
「NARVIS(ナービス)」は、ラテン語で「船」を意味し、サロンを一歩出た瞬間にお客様の気持ちを明るくし普段とは違うファッションに挑戦したくなるような、新たな目的地へと導いていくサロンを目指す。丁寧なカウンセリングとお客様の髪質やライフスタイルに合わせた再現性の高いスタイルは岡山で大きな支持を集める。
店舗展開 | 2店舗 |
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従業員数 | 10名 |
サロンコンセプト | お客様が新たな一歩を踏み出せるようなサロン |
サロンターゲット | 20〜60代の幅広い年齢層 |
「NARVIS」店舗情報
所在地:
〒700-0971
岡山県岡山市北区野田3-4-5
Webサイト:https://www.narvis.rocks/
Instagram:@ NARVIS_Hair
(執筆/池山章子、取材・編集/A PRESS編集部、撮影/樋上孝典)