リピート率80%以上、来店周期の管理につながり売上も満足度も向上!U Hair高木倭さんに聞く、「次回予約の提案」のコツ

Jul 13.2023
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年々増加している美容室。厚生労働省の発表によると2022年3月末に、全国の美容室の店舗数は26万軒を超え、過去最高を記録しました。ますます選択肢が増える中で、どうすればお客様に長く通っていただけるのでしょうか。

「次回予約のご提案を徹底すると、リピート率や売上の向上はもちろん、施術の幅も広がるなどメリットが大きい」と語るのは、「U Hair(ユウヘアー)」石川橋店 店長の高木倭(たかぎ やまと)さん。愛知県・東京都を中心に11店舗を展開する「U Hair」では、お会計後の次回予約提案を徹底し、8割以上のお客様が予約を入れて帰られるといいます。

どのようにして次回の予約を提案し、予約率を向上しているのか。そのコツやメリット、成果を伺いました。

お会計時の次回のご予約提案を徹底し、80%以上のリピートを実現!

―― なぜ、「次回予約の提案」に取り組むようになったのでしょうか?

高木さん(以下敬称略)当グループが会社全体で次回予約の提案に取り組むようになったのは、20年ほど前。僕の入社以前のことで先輩から聞いた話ではあるのですが、当時はトレンドに合わせてホイルワークやハイライトに力を入れようとなったものの、ケア不足や度重なるカラーによる髪のダメージが気になるお客様が多かったそうです。それなら、お客様の来店周期をきちっと管理して、まずは髪を美しく保つことからはじめようという考えが、取り組みのきっかけでした。

今では、店舗によって多少の差はありますが、当店の場合80%以上のお客様が次回予約を入れて帰られます。

―― 80%以上! 20年も前に始めたことがシステムとして今もなお定着しているのもすごいですね。次回予約はどういった流れで提案されているのですか?

高木当店のサロンワークの大まかな流れは、「①カウンセリング」「②施術」「③アフターカウンセリング」「④お会計・ご案内」です。どのステップも次回の予約につなげるには欠かせず、特に力を入れているのは「③アフターカウンセリング」。その上で、具体的に次回のご予約をご提案するのは最後のお会計のタイミングです。基本的にすべてのお客様に、次回の予約をご提案しています。

―― ではまず、どのようにお会計の際にご案内されているのか、教えていただけますか?

高木「次回の予約はどうなさいますか?」と伺い、そこで日時を決めていただいています。また、次の予約を3か月以内で取っていただいた場合は施術料が5%オフになる制度など、お客様がその場でご予約しやすくなる工夫も用意しています。

―― 施術の直後は気持ちが高まっていて、次回も楽しみになっていそうですよね。一方で、「先の予定はまだわからなくて決められない」という方もいらっしゃいそうですが……。

高木はい、やはり先のことなので予定が合わなくなってしまうことも多々ありますよね。なので、3か月以内の日時変更は何度でもOKとしています。実際、「先の予定はまだわからないけど、変更可能ならとりあえず予約を入れておこう」という方も多いんですよ。

また、予約から当日までにお日にちが空いてしまうので、直前で「忘れていた!」ということも起こりやすい。そこで、予約日の3日ほど前に確認のお電話をするようにしています。中には電話はいらないという方もいらっしゃるので、ご予約時に「次回予約のお日にちが近づいてきたら、確認のお電話を差し上げてもよろしいでしょうか?」と伺っています。

―― それなら、次回予約のハードルがグンと低くなりますね! 提案の際には、新規のお客様とリピートのお客様で何か変えていることはありますか?

高木新規の方には次回使える有効期限3か月の1,000円分ギフトカードもお配りしています。そちらも次回予約へとつなげてくれるアイテムとして役立っています。

実際に新規のお客様へお渡ししているギフトカード

高木ここまでは特典のお話をしてきましたが、一方でこちらからの過度な次回予約のアプローチはお客様に不信感を与えてしまうこともあります。なので、強制はまったくしていません。もちろんご自宅に帰られてからまた電話で連絡しますという方もいらっしゃいます。早めのほうが予約は取りやすく、特に土日はすぐに埋まってしまう点だけはお伝えしますが、それ以上は強く押したりせず、提案はきちっとした上で判断はお客様に委ねるというスタンスでやっています。

また、次回予約を入れていただくためにもっとも大切にしているのは、アフターカウンセリングです。施術前のカウンセリングももちろん大事。その上で、アフターカウンセリングで次回へつなげる提案を行なうようにしています。

施術の『感動』は当たり前! 次回も訪れたくなるようなワクワクをプラスする

―― 「次回へつなげるアフターカウンセリング」というのは、どういったことをされるのですか?

高木その日の仕上がりやスタイリング方法についてだけでなく、「今日はこんな感じにしたから、次回いらっしゃる頃にはこのくらいの状態になっているだろうし、次はこうしてみてもいいかもしれないですね!」というように、次回のスタイルの提案までをセットで必ずお伝えしています。

アフターカウンセリングでしっかりお客様をワクワクさせるご提案をするには、やはり最初のカウンセリングと施術そのもの、施術中の会話が大切なんですよ。その中で、お客様の好みやこれまでチャレンジされなかったスタイル、日頃のケアや生活スタイルをつかむ。そうしてその日もベストな仕上がりにする。お客様が感動して喜んでくださるスタイルをつくるのは当たり前。その上で、もう一歩お客様に踏みこんでみるよう意識しています。

―― そこまで提案してもらえたら、次回も「どんな提案をしてもらえるかな?」と楽しみになりそうです。

高木そうですよね。でも、それが当たり前になるとワクワクも減ってしまう。僕はリピート1回目、つまり2度目の来店でどれだけご満足いただけるかがもっとも重要だと思っています。新規の場合は感動が大きいし、さらにギフトカード効果もあるため再びご来店くださる確率はかなり高いんです。けれど、2度目は初めての時よりは感動が薄れやすい。だから3度目の来店へとつなげるのが1番大変。2度目の来店時にさらにお客様の心をつかむ施術や接客、真新しい提案をして、いかに満足してもらえるかが鍵となってきます。

―― 具体的にはどのようなことをご提案しているのでしょうか?

高木お客様自身が興味は持っているもののやったことはない、というところを推すことが多いですね。毎回カット・カラーばかりなのであればパーマを提案してみたり、ウィービングを勧めてみたり。今までされてこなかったことでも、その方に似合うスタイルだったり、チャレンジしたいという気持ちがお客様に少しでもある施術内容だったりしたら、果敢に踏み込んでいくようにしています。

―― お客様がこれまで手を出せずにいた理由の中には金銭面もあるのではないかと思うのですが、そういった部分はどうアプローチしていますか?

高木例えばヘッドスパだと、当店には本格的なメニューの他にシャンプーの時に10分ほどでできる+1,000円のものもあるんです。最初はそういった気軽にトライできるメニューの提案をすることが多いですね。また、普段2か月に1回ご来店くださっているお客様に1か月半のスパンで来ていただき、2回に1回はカラーをポイントカラーにして、その代わりにスパをプラスしてみるなどのご提案をすることもあります。それであれば金額を上乗せしなくても、少しだけ来店周期を短くすることで髪の状態を良く保てるし、新しいことにもチャレンジできるので、お客様も取り入れてみやすいですよね。

―― そういった提案をいただけると、信頼感も高まって相談もしやすくなりそうです。

高木提案を重ねていくことで、次回の予約に関しても「次はいつ来たらいいかな?」とお任せでご相談くださるお客様も多々いらっしゃいます。予約の時期やメニュー、スタイルなど全般において、「プロの視点から提案してくれたほうがありがたい」という声が多くて。僕自身もサロンワークを通して「意外とお客様って踏み込んできてほしいものなんだな」と気付きました。

―― 次回予約の提案につなげやすいアイテムやメニューはありますか?

高木システムトリートメントは効果持続の目安がメーカーごとにあるので、それにならって「次は大体このくらいに来てもらえれば髪の状態をキープできますよ」という提案へつなげています。サロンへ行った当日はカット・カラーに意識が向きがちですが、実際「あ、変わった」「セルフケアだけで済ませず、サロンでケアして良かった」と変化を感じていただきやすいのって、手触り感だったり艶感だったりするんです。だから、トリートメントは積極的におすすめしています。

高木特に当店は大人女性のお客様が多いので、さまざまなトリートメントの中でも「コアミー」はまさしくドンピシャ。重くなりすぎたりべたついたりせず、髪自体が自然に立ち上がってナチュラルな艶感があり、質感にブレがないところが気に入っています。システムトリートメントからホームケアアイテム、あるいは最初はホームケアアイテムから次回来店時にシステムトリートメントを行なうといったご提案もしやすいですね。

「共感しすぎるな」?! お客様との会話のポイント

―― 「一歩踏み込んだ提案」は加減が難しそうだなと感じます。大人女性のお客様が多いと、特に若手のスタッフの方はどこまで踏み込めばいいのかためらわれそうですが……。

高木そうなんです。僕自身も以前はどの程度踏み込んだらいいのかわからずにいたこともありました。そこで後輩に伝えているのは、お客様に感動を届けるために、その人のことを知ろうと関心を持つこと、そして踏み込むのはあくまで美容師というプロの視点からということ。

やはりお客様を知ろうと思わなければ、カウンセリングでしっかりニーズを引き出せないですし、ニーズが引き出せなければご満足いただける施術も次回を見越したご提案もできません。また、まず「この人のことを知ろう、知りたい」という気持ちがないとその場しのぎの希薄な関係だとお客様にはすぐ伝わってしまいます。上辺だけでなく、お客様に根底から向き合って興味を持つことが大切。それによって信頼が蓄積され、一歩踏み込んだご提案も受け入れていただけるようになります。リピートのお客様の場合は、前回の会話の内容や仕上がりを把握しておいて、しっかり準備をしてから入るようにしていますね。

その上で、一歩踏み込むのはあくまで美容師としての視点からの提案について。お仕事やプライベートの話に入り込んだり、感情に踏み込んだりするのとは別です。あくまで客観的に、技術者としての視点で考えることが欠かせません。

この「客観的に」にも近い話なのですが、最近はよく「安易にお客様に共感しすぎるな」と伝えています。

―― 共感しすぎるな……? なぜでしょう?

高木僕も最近、いろんな人や若手スタッフのコミュニケーションを見ていて気がついたことなのですが、「わかります」って何気なく使いがちなんですよね。でも、例えば50代のお客様が抱えてらっしゃる髪のお悩みに対して、「あー、わかります」と20代前半の子が言っても、説得力がない。その場合は「そういったお話、他のお客様からもよく聞きます」という相槌のほうがいいよ、と教えています。

安易に「わかります」と共感を示そうとすると、「わかるわけないでしょ」と思われてしまうでしょう。実際わかるわけもなくて、僕たちはそういうお悩みが年齢を重ねると生まれやすいことや、そのお悩みが生まれる理由を「知っている」だけなんです。

ノウハウは担当制で先輩が後輩に伝授! 動画を活用した振り返りも有効

―― お客様との関わり方のノウハウは属人性が高い印象もありますが、サロンとして教育の取り組みや機会を設けていますか?

高木講習の機会をサロンとして設けています。また、当サロンでは、先輩が教育者として後輩を受け持ち、サロンワークの指導から悩んだりした時のサポートまで幅広く行なう「ブラザー・シスター制度」を導入しています。次回提案につなげるカウンセリング・アフターカウンセリングの仕方や心構えも、この中で伝えていっていますね。

後輩に教えると、自分の中でも一旦整理したり考え直したりする機会にもなるんですよね。「こういう風にしたらいいよ」と後輩に伝えながら、自分自身の中でも答えが明確になっていくのを感じることが多々あります。アウトプットとインプットが同時にできているような感覚で、教育しているように見えてこちらが学ぶこともかなり多いんです。

―― 後輩への教え方で、工夫していることはありますか?

高木トリートメントの技術や髪についての知識を教えるのはもちろんですが、先輩がカウンセリングの様子を動画に撮り、それを見て振り返りを行なったりもしています。

動画に撮られるって緊張すると思いますし、後から自分で見るのは気恥ずかしいんですけども。でも自分がお客様からどう見られているかを自覚するには、自分の姿を客観的に見ることが1番早い。先輩から口で言われるだけではいまいち実感できないことも、動画で見ると気付けることが多く、成長につながります。

また、より若手の意欲を高める仕掛けとして、当店ではアシスタントではなく「ケアリスト」というポジションを導入しています。入社1年目の早い段階から、メーカーさんなどにご協力をいただいてカウンセリングの講習を開いてもらうなどし、ケアのプロという立場になってもらう。アシスタントはシャンプーばかりでほかの仕事を任せてもらえないという環境だと、やりがいを感じにくくなり、「飽き」が生まれてしまいますよね。だから、早いうちから若手スタッフたちが輝ける場をつくることが大切だな、と。

―― ケアリストとして働く後輩に感じる変化などはありますか?

高木やはりケアリストを任されている、という自覚が芽生えると接客や振り返りに対するモチベーションも変わってきます。「やらされている」という感覚から、「もっとお客様のためにこうしたい」という自発的な考えに変わり、「では、そのために自分はどうするべきか」というところにまで意識が変化していくのを近くで感じられます。そういう意識が育つと、カウンセリング力も伸びますね。

お客様の満足度アップが、新規獲得や売上増などの成果も運んできてくれる

―― 次回予約の提案によって、お客様からの声や売上にどういった影響が生まれていますか?

高木来店周期を管理できることでお客様の髪がきれいになったり、新しいメニューをおすすめしたお客様から「やってよかった」という声を聞いたりできるのは単純にうれしいし自信にもなります。

また、売上も上がりますよ。周期管理で来店回数が増えれば、1回あたりの金額が変わらなくてもトータルでの売上は向上しますし、新たなメニューを追加してくださる方も多いので客単価も上がります。また、お客様の満足度が高くなることで、紹介などお客様が新たなお客様を運んできてくれるという連鎖が生まれ、それが売上へと直結しています。

―― 口コミでいらっしゃった新規の方は、リピーターになる確率が高い印象があります。

高木そうですね。今回の取材のためにいろいろと考えていたら、店の売上の根本にはやはり次回予約があるんだなと改めて気付かされました。

―― 施術面でのメリットがあれば教えてください。

高木やはり周期管理をすることでお客様の髪の状態を良く保て、デザインの幅が広がります。パーマをかけていても髪がきれいならハイライトも一緒に提案できたり、「今回はここまで、次回はこれを踏まえてこうしよう」と段階を踏んだご提案もできたりします。それによって、これまでは諦めていたスタイルへの挑戦を可能にしてくれるのが1番のメリットと言えますね。

毎回新鮮な『感動』を与えることで、生涯顧客を増やしていきたい

―― これからも全店舗を通して次回予約の提案を続けていくと思いますが、今後の展望などはありますか?

高木次回のご予約を入れて通い続けてくれるということは、一人ひとりのお客様と長く関わり合えるということ。それによって当社はこれまで続けてくることができたので、そこはブラさずに突き進みたいですね。

あとはお客様が長く通ってくださることが、スタッフが長く勤められる環境にも通じるので、そこの連動も大切にしていきたいです。新規のお客様になぜ美容室を変えようと思ったのか尋ねてみると、「前のところは長く通っていたけれど飽きてしまった」と答える方が多いんです。そうならないためにも、お客様が飽きてしまう前に我々美容師が先回りをし、常に新しい提案をして感動を与えていくことが必要だと感じています。

「一生あなたに私の髪を任せたい」と多くのお客様に思っていただけたら本望。僕自身はもちろんのこと、たくさんのお客様にそう思っていただけるようなスタッフの育成にも励んでいきたいと思っています。

Profile
U Hair 石川橋店 店長 高木倭

高木倭Yamato Takagi

U Hair 石川橋店 店長

愛知県豊田市出身。岡崎ヘアスタイリストスクール卒業後、2011年に株式会社ゆうへ入社。2022年より石川橋店 店長を務める。持ちの良いカットや大人女性に似合わせるボブスタイル、メンズヘアが得意。一人ひとりに寄り添うカウンセリングを大切に、上質な仕上がりはもちろん、居心地の良い空間づくりを心がけている。

Instagram:@yamato0121

「U Hair」サロン情報

「感謝の心を持とう、全ては感謝の心から始まる。」を理念に、「技術で、そして人間力でお客様に感動をお届けする」サロンワークを提供。ホテルのラウンジのようにゆったりした上質な空間で、落ち着いた時間と体験をお客様へお届けしている。

店舗展開 「株式会社ゆう」グループ店 11店舗 (エステを含めると13店舗)
従業員数 10名(石川橋店のみの人数)
サロンコンセプト 技術で、そして人間力でお客様に感動をお届けする
サロンターゲット 30代〜の大人女性を中心に、地域にお住まいの方

所在地:
〒466-0836
愛知県名古屋市昭和区上山町2-1-4

Webサイト:http://www.u-group.net/pc/#salon
Instagram:@uhair.i

(文/鈴木美奈子、取材・編集/A PRESS編集部、撮影/しょーゆ)

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