S H E A千代間さん・TONI & GUY赤岡さんが伝授する! 透明感と自然な動きを生み出すグレイカラーデザイン
グレイカラーの「暗くなる」という印象をいかに払拭し、ファッションカラーと同じように楽しんでいただくか……。生涯顧客づくりを考える上で、大切なポイントです。では、どうしたらグレイカラーで自然におしゃれなカラーデザインをつくり上げられるのでしょうか? そこで今回は、ファッションカラーからグレイカラーへの移行期に当たるファーストグレイ層へのカラーデザインを「SHEA 表参道(シア)」店長でトップスタイリストの千代間勇翔(ちよま ゆうと)さんと、「TONI & GUY 青山店(トニー・アンド・ガイ)」カラーリストの赤岡翔太(あかおか しょうた)さんに教えていただきました。
陰影で動きと立体感を生み出す! ハイライト・ローライトのグレイカラーデザイン ――S H E A 千代間勇翔さん
今回のモデルさんはファーストグレイ層の方。今後グレイカラーに移行していくにあたって、グレイカラーに対してマイナスのイメージを抱かせないようにすることが大切です。今回は、透明感のあるハイブリッドタイプを使いながら、ハイライトとローライトを入れてファッションカラーのような仕上がりをつくっていきます。ハイライト・ローライトを入れることで全体にメリハリをつけ、ボリューム感を調整しスタイルの躍動感を表現します。
モデルさんの髪質
髪の長さはボブスタイル。施術前の状態は、根元が1〜2cm弱伸びてきて白髪がちらほら見えており、毛先は前回のカラーが退色して赤みが少し出てきています。
カラー施術にあたっての一番のポイントは、髪質に合わせた薬剤選定です。今回のモデルさんはカラーで赤みが出やすいため、根元は透明感を表現するためにハイブリッドタイプを選定。ハイライトは主張しすぎないようにライトナーを選択しています。また、硬い髪質でもあるので、毛先には柔らかさを表現するためにベールタイプを使っていきます。
施術ステップ
STEP1:リタッチ部分にハイブリッドタイプをゼロテクで塗布
今後もカラーを繰り返していく上で、薬剤をできるだけ頭皮につけないような施術は欠かせません。頭皮環境への配慮はもちろん、施術時のお客様の快適さにもつながります。そこでSHEAではゼロテクニック(以下、ゼロテク)を取り入れています。
ゼロテクのポイントは、スライスを取ったら、しっかりと根元を起こしてピンと張った状態で、コームを頭皮に垂直に立てて塗布すること。こうすることで薬剤が髪にしっかりとのり、染まり具合が変わってきます。
STEP2:ハイライト・ローライトを入れる
今回のハイライトの目的は、立体感や躍動感といったニュアンスを生み出すこと。そのため、細かく入れていきます。特に顔周りの一線目をしっかりすくうことで、正面から見たときに重い印象を与えないようにしていきます。
顔周りの一線目に細かいチップでハイライトを入れたら、そのすぐ下にローライトを入れていきます。
1枚目のローライトはハイライトの下に敷くイメージで、チップが大きくなりすぎないよう、小さめに入れていきましょう。そうすることで、ハイライトの薬剤のレベルを抑えながら、陰影をつけられます。
続けて、2枚目のハイライト、2枚目のローライトと入れていきます。ここでポイントになるのが、一番引き締めたいハチの部分に当たる、2枚目のローライト。メリハリのあるスタイルをつくっていくために、スライス幅を厚めに取ってローライトをしっかり入れ、引き締めます。
また、ボブスタイルは内側にいけばいくほど、被ってくる髪の量が多くなります。そのため、1枚目より2枚目、2枚目より3枚目と、徐々にローライトのスライス幅を厚くしながらつくっていきましょう。
STEP3:毛先にベールタイプを塗布
今回はベールタイプのオリーブとナチュラルグレイにクリアを組み合わせ、赤みのある髪のトーンを変えることなく柔らかい色みにしていきます。
ベールタイプは粘度が低くのびが良いので、特に毛先の塗布において操作性が高いのが特長。そのため染めムラを軽減し、塗布スピードも短縮することができます。
4:放置・シャンプー
カラーの放置後、まずは毛先のカラー剤を洗い流してからホイルを外し、全体をシャンプーします。
5:ブロー・仕上げ
いつものカラーにハイライトとローライトをプラスすることで、お客様により楽しんでいただけるファッションカラーのような印象の仕上がりに。ブローもカラーの陰影を生かして躍動感を生まれるように仕上げました。
使用したレシピ
-
- ■根元
8 NG
1剤:2剤=1:1(OX6%)
-
- ■ハイライト
14 LT
1剤:2剤=1:2(OX6%)
-
- ■ローライト
V6 N:6 OLB=3:1
1剤:2剤=1:1(OX2.8%)
新しくなったプライムを使ってみて、最も特徴的だと感じたのはハイブリッドタイプの透明感。今回のデザインでも、根元にハイブリッドタイプを使用したことで、グレイカラーの印象につながりやすい赤みが抑えられています。
また、塗っていてニオイが気になりにくいのもうれしい点です。お客様からも「カラーのニオイが気にならない」と喜んでいただけています。
グレイカラーのデザイン性とお客様の快適性を高いクオリティーで両立していくツールになると感じています。
千代間勇翔Yuto Chiyoma
S H E A 表参道 店長
東京都出身。窪田理容美容専門学校卒業後、都内3店舗を経て2018年9月にS H E A入社。2020年より表参道店店長を務める。乾かすだけで流れる前髪パーマや前髪カット、顔周りのカットを得意とし、お客様からの支持も厚い。女性らしい柔らかさを大切にしたスタイルを重視し、一人ひとりの骨格や顔立ちに合ったデザインを提案している。
※記載情報は取材時時点。2022年2月よりS H E A aoyama 店長に就任
Instagram:@shea_chiyo
グレイカラーの暗くなるイメージを払拭! グレイカラーのバレイヤージュ ――TONI & GUY 赤岡翔太さん
バレイヤージュを取り入れたグレイカラーで、「グレイカラーは明るくできない」というイメージを払拭するデザインです。地毛になじむようなグラデーションに仕上げ、自然な立体感を表現します。
モデルさんの髪質
今回のモデルさんは細めの髪質で、ロングヘアの方。ファーストグレイに入ってきたくらいの状態です。そこで今回ポイントになるのは、グレイカラーで明るい印象にしていくための「ベースメイク」です。
ここ10年ほどでグレイカラー自体のあり方が変わってきています。一方で、一般のお客様にとっては、まだ「グレイカラーはただ暗くするだけ」というイメージが根強く残っている面があり、それがグレイカラーを提案する際のネックになります。そこで、最初にベースを整えてからグレイカラーの薬剤を使い、しっかりと色みをのせられるような状態をつくることで、明るいデザインに仕上げていきます。
施術ステップ
STEP1:エアタッチで毛量調整をし、ブリーチワーク
セクションを取り分けます。トップはスタイルをつくるときに全体の表面に出てくる部分になるので、一番重要です。ホイルワークはまずトップの後ろ部分から前に進めていきます。
ホイルワークにおいてポイントになるのが、毛量調整。毛量を多く取りすぎると塗りムラが出やすくなるので、自分が作業しやすい厚さを設定しておきましょう。毛量の調整は、ドライヤーの風を根元から当て、短い毛を落としておこないます。短い毛を一緒にすくったままハイライトを入れてしまうと、根元のほうが筋張って毛先がボケた印象になってしまいます。そのため、エアタッチを使って短い毛をしっかり落とし、ハイライトを入れる髪を取り分けることが重要です。
毛量を調整したら、新生部からブリーチ剤を塗布していきます。塗り終わり部分は、少し逆撫でするようにしてぼかしましょう。
毛先は「シェルパ コンディショニング ミスト」をかけて保護しながらブリーチをしていきます。髪を濡らすことでブリーチ作業もしやすくなり、スピーディーな施術につながります。塗布が終わったら、折り目で薬剤の量に差が出てしまわないように、ホイルは折り畳まず下ろしたまま作業を進めます。
全体の作業時間がかかるので、ブリーチのパワーコントロールも重要です。塗りはじめと塗り終わりでムラが出ないように、40分以内を目安にブリーチワークを終えられるようにしましょう。
STEP2:ベースのカラーを塗布
ナチュラルグレイの6レベルを塗布していきます。この段階のベースのカラーは、地毛の明るさに既染部をなじませていくのが目的。そのため、薬剤は明るくなっている部分にのみ塗布します。
STEP3:放置・シャンプー
放置・シャンプー後の状態を見てみると、根元のほうに暗い色が混ざり、毛先にいくほど明るくなっていることが分かります。これは毛量調整をしているからこそ。エアタッチでの毛量調整を丁寧にすることで、ハイライトのようでいてハイライトとは異なる、自然なグラデーションをつくり出せます。
STEP4:オンカラー
ホイルワーク時と同じようにセクションを取り、トップの後ろから進めていきます。
まず、バックセクションの根元から塗布していきます。ブリーチした部分に少しオレンジみが出ているので、この部分を処理するかで仕上がりの印象が大きく変わります。薬剤は低明度のブラウン量が多いものを使用し、地毛になじむトーンに。この処理によってオレンジみを軽減し、リフトによるムラを解消します。また、塗り終わりのラインが出ないよう、ハケを払うイメージで塗布してください。
バックセクションのトップまで塗布が終わったら、サイドセクションに移ります。サイドは顔周りに明るさが残るバランスになるよう、後頭部に向かって下がっていくようなイメージで塗布します。
根元の塗布が完了したら、残りの部分を明るい薬剤で塗布していきます。まずは、根元と毛先の境目を避けて、毛先を塗布していきます。
毛先まで塗り終わったら、境目の部分に明るい薬剤を置き、指を使って軽く挟むようにしながら薬剤をなじませるイメージでボカしていきます。
このとき、ボカしている指を下に伸ばしすぎると、暗い薬剤が下までいき過ぎてしまうので、あくまでも境目部分のみ混ぜ合わせるようにボカしましょう。
STEP5:放置・シャンプー
STEP6:ブロー・仕上げ
ホイルワーク時にエアタッチを使って毛量調整をし、暗くする部分と明るくする部分を仕分けたことで、自然な立体感を表現。生え際の部分も暗い色でしっかりカバーしたことで、オレンジみも目立つことなく、地毛になじむ自然なグラデーションに仕上がっています。
使用したレシピ
-
- ■エアタッチ
アリミノ ブリーチ 120
1剤:2剤=1:2(OX2.8%)
-
- ■ベースメイク
6 NG
1剤:2剤=1:2(OX2.8%)
-
- ■オンカラー
[ 根元 ]
5 NG:8 NG=1:1
1剤:2剤=1:1(OX2.8%)[ 毛先 ]
V8 NG:CL:V8 M=2:1:0.6
1剤:2剤=1:1(OX2.8%)
新しくなったプライムは、粘性などの操作性はこれまでを引き継ぎながら、発色の良さが向上している印象です。特に日本人がコンプレックスに感じやすい赤みやオレンジみを、絶妙な具合でカバーしてくれるラインアップが加わっています。今回のデザインでも、特に根元の調整にその発色の良さが生きています。
単にグレーに染めるのではなく、髪の素材を生かして自然にカバーしてくれる薬剤だと感じています。
赤岡翔太Shota Akaoka
TONI & GUY 青山店 カラーリスト
群馬県出身。山野美容専門学校卒業後、2004年にTONI & GUY入社。カラー専門美容師として持つ豊富な薬剤知識と毛髪理論に基づいたデザインカラーを提案する。特にバレイヤージュ、エアタッチ、ハイライト系のデザインカラーを得意とし、「シマシマにならないバレイヤージュ」「地毛になじむ」「伸びても気にならない」と、お客様からの人気も高い。常にお客様の髪のコンディションを最優先に考え、品の良いデザインの提案を日々意識している。
Instagram:@shota_akaoka
YouTubeにて、カラーストーリー プライムを使ったグレイカラーデザインの動画を公開中
テクニック動画① SHEA 高遠様
テクニック動画② SHEA 佐藤様
テクニック動画④ 岩屋様