店販やプラスメニューの提案での成果が若手美容師のモチベーションアップに! ZOEY吉田龍平さんとSHIZUKAさんに聞く、令和時代における若手美容師の育て方とは
「お客様とのコミュニケーションがうまくいかない」「モチベーションを保つのが難しい」など、若手美容師の悩みは尽きません。一方でサロンは、こうした若手の悩みにどう対応するべきか日々試行錯誤しています。
福岡の中心地に店舗を構える「ZOEY daimyo(ゾーイダイミョウ)」は、最新デザインの提案で注目を集める、若手美容師が多く活躍するサロンです。数年前から教育やサポート体制のアップデートに取り組むことで、若手美容師の意識に変化が生まれ、店販の売上アップや自信やモチベーションの向上にもつながっているといいます。
若手美容師がいきいきと活躍するために、サロン側はどのようなサポートをしていけば良いのでしょうか。その方法や取り組み、そして成果について、ZOEY 代表の吉田龍平(よしだ りゅうへい)さんとZOEY daimyo店 店長のSHIZUKAさんにお話を伺いました。
若手美容師が活躍するために時間をかけて丁寧に育てていく
―― 若手美容師さんが活躍していると伺っています。そのような環境づくりに取り組むようになったきっかけを教えてください。
吉田さん(以下敬称略):サロンのオープン当初は、アシスタントを早期スタイリストデビューさせる方針で教育プログラムを作成しました。それが2022年頃からデビュー後に伸び悩むスタッフが出てくるようになり、もっとスタイリストデビューまで時間をかけて丁寧に育てていこうと考え始めたんです。
―― 早期スタイリストデビューをすることで、伸び悩む美容師が出てきてしまうのはなぜでしょうか?
吉田:自分のスタイルを確立できていない状態でデビューをしてしまうからです。今は、お客様がSNSでなりたいスタイルを見つけてサロンや美容師を選ぶ時代なので、多くの美容師がSNSに力を入れています。美容師独自のスタイルが確立できていない投稿は、お客様の目に留まらないので、集客に苦戦してしまうんです。
また、2022年頃からSNS上でデザインカラーが飽和してきたと感じています。当店はデザインカラーを得意とするサロンですが、いくらおしゃれなデザインカラーを打ち出してもリーチ数が伸びない状況になってきたなとも感じます。
―― なるほど……。美容師として自身のスタイルを確立した上で投稿が打ち出せないと、SNSで埋もれてしまうのですね。
吉田:はい。自分の強みや押し出したいスタイルをしっかり確立した上でスタイリストデビューしたほうが良いと考え、デビュー時期を入社後3〜4年目くらいに設定しようと見直している最中です。
また、美容師としての足場を固めるために、若手のうちに礼儀や基本的なコミュニケーション能力を身につけることも重要だと感じています。こうした教育にも時間をかけていこうと考えています。
―― 他に、若手美容師自身にはどのような悩みがあると感じますか?
吉田:先輩美容師のように活躍するには、日々コツコツと技術を磨いていくことが大事なのですが、そもそも「頑張り方」そのものが分からない、目標を自分で設定することが難しいという悩みを持っている子が多いと感じます。また、入社できたことに満足してしまっているのかなと感じることもありますね。
実践的な技術の習得や一人ひとりに向き合った面談を通して若手美容師の意識を変えていく
―― デビューまでの教育体制を見直されているとのことですが、現在、行っている取り組みについて教えてください。
吉田:入社1年目の美容師には基本的な技術を磨いてもらうために「ZOEYアカデミー」という教育プログラムの実施、またスタッフのその時々の課題や悩みに寄り添い一緒に解決していくために幹部陣と店舗代表が個人面談を行っています。他には、より実践経験を増やすため、営業前の時間に店販やプラスメニュー提案のロールプレイングも行っています。
面談は、各店舗で月に一回実施していますが、気になることがあれば随時、時間を取るようにしているので、結果的にみんな週1くらいの頻度で面談をしていますね。
―― 相談しやすい環境づくりがなされているんですね。面談ではどのようなことをされているのでしょうか?
SHIZUKAさん(以下敬称略):前回の面談で立てた目標の振り返りや次回目標の設定などです。最初のうちは「何を相談すれば良いのか分からない」というスタッフが多かったので、私たちのほうから「じゃあこれをこうしてみよう」とか「こういう目標でやってみたら」など提案する形になりました。大名店では1人に約30分〜1時間ほどかけて、丁寧に話を聞くことを意識しています。
「頑張り方そのものが分からない」と悩んでいたスタッフも、一緒に目標を設定して、実行し、振り返りをして、達成できたから次の目標を掲げる、ということを繰り返すことで徐々にスタッフ自身から「撮影をしたので見てください」とか「こういうことにチャレンジしたい」などの声を聞けるようになってきました。
―― 頑張り方のコツを掴めるようになったんですね…! では、「ZOEYアカデミー」や「ロールプレイング」についても、詳しく教えてください。
吉田:ZOEYアカデミーは、営業日や休日とは別に週に1日使って、 技術レッスンを実施しています。4月から11月までの約8ヶ月間でカットやカラー、パーマなど、各施術ごとにその技術が得意な先輩スタッフが指導し、都度テストを実施します。最終的には卒業制作を行う予定です。
SHIZUKA:ロールプレイングは、先輩スタイリストがお客様役になり、アシスタントや若手スタイリストの店販やプラスメニュー提案の仕方や接客を見てアドバイスを行います。
店販やプラスメニューの提案に苦手意識を持っている若手はやはり多くて、中には「お客様に“売りつけている”と思われるのでは?」と考えて積極的になれないスタッフもいるようです。ですが、店販もプラスメニューも、お客様の悩みを解決するためであり、良い商品だから提案するもの。ロールプレイングを行う中で、そうした意識を持てるように指導しています。
―― 指導や面談をする際に気をつけていることはありますか?
吉田:頭ごなしに叱ったり一方的に指示をしたりするのではなく、ゆっくり確認しながら進めるようにしています。時間はかかりますが、今の若手育成に必要なことだと実感し始めているところです。
また、技術の習得という点では、「ZOEY」の技術がスタッフ全員に行き届くように、教える側の技術を統一することは徹底しています。
SHIZUKA:そうですね。教え方にズレが起きないよう、アカデミーを担当したスタイリストが「今日はこういうことをしました」とグループLINEで必ず報告するようにしています。
提案力がアップし店販の売上が向上! 若手美容師の自信にもつながった
―― 取り組みを経て、若手スタッフの変化はありましたか?
SHIZUKA:ロールプレイングを重ねたことにより、きちんとお客様に寄り添った提案や接客ができるようになり、お客様との信頼関係を構築できるようになったと思います。お客様のほうからお悩みを相談されることが増えたり、リピート率がアップしたり、中には「シャンプーがなくなったから」と店販を買うためだけに来店してくださるお客様もいらっしゃいました。お客様とコミュニケーションを取れるようになり、売上にもつながり、結果的にスタッフの自信につながったように感じます。
また、自分で実感を持って商品の良さを説明できるようになり、「押し売りをしているのかもしれない」という意識がなくなったと感じます。「このお客様の髪悩みには、この商品を使ったら良くなるからおすすめする」という思考に変化してきたと思います。
吉田:ある若手スタッフは、トリートメント比率が1月は18%だったのが、6月は70%まで上がりました。数字として成果が出ることで、確実にモチベーションも上がりますよね。
―― 18%から70%! 急激に伸びていますね。売上に対する意識にも変化がありそうです。
SHIZUKA:そうですね。全体や個々の売上は、朝礼で必ず報告するようにしているのですが、一人ひとりの売上が積み重なって目標の売上達成につながるんだという意識や責任感が生まれてきたと感じています。
―― これまで若手スタッフのための、さまざまな取り組みについて伺ってきましたが、お店全体にいい影響が広がっているように見えます。
SHIZUKA:若手スタッフが頑張ることで、サロン全体が伸びているという実感はあります。例えば売上にしても、今までは自分の売上しか見ていなかったスタッフも、全体の売上を見るようになりました。今の自分がサロン全体の中でどれくらい売上があるのか分かることで、さらに頑張ろうという気持ちになっているようにも見えますね。
お客様の反響が大きかった「シェルパ」キャンペーン。大事にしたのは、「自分の言葉」で商品の良さを伝えること
―― 「SHERPA(シェルパ)」のキャンペーンも成功したと伺いました。どのようなキャンペーンだったのでしょうか?
吉田:1年前の夏に「シェルパ」の「コアプロテクトミルク」を割引して販売するキャンペーンを行いました。好評だったため、今年の4月に2回目のキャンペーンを実施し、すでに使っているお客様には詰め替えサイズを販売しました。
―― キャンペーンではどのような成果がありましたか?
吉田:2023年の夏に実施した最初のキャンペーンでは、ZOEY2店舗で426本を売上げるほどお客様から好評でした。さらに、年間を通して店舗全体で1200本(詰め替えを含む)を販売し、一時的な売上アップだけでなく、通常の月も安定した店販売上を維持できるようになったと感じています。2回目のキャンペーンを告知した時も、かなり反響がありました。
SHIZUKA:サロンに行かない期間も、サラサラな状態を保てるという満足感を感じてもらうことが本当に多くて。キャンペーンをしていない時に「なくなったからまたください!」という声がお客様から上がったり、2回目は「キャンペーンがあります」とお伝えすると「え、何があるんですか!」という反応があったりと、お客様からの関心がとても大きいキャンペーンでしたね。
―― キャンペーンでは、どのような工夫をされましたか?
吉田:アリミノさんが販促ツールとしてPOPを作ってくれたり、個人の売上の成績表を作成したりしてくれました。売れる毎に成績表にシールを貼っていったのですが、目に見える結果によってスタッフのやる気が上がっていったと感じました。
SHIZUKA:私はどうしたらお客様が欲しいと思うか考えることや、自分で使ってみることを大事にしています。私が感じている商品の良さを他のスタッフがそのまま伝えても説得力がなく、お客様には響きません。なので、スタッフに商品をしっかり使ってもらい、自分の言葉でその良さを伝えられるよう工夫しました。
例えば、「使ってみてどうだった?」とか「私はこう伝えているけど、どう感じた?」といった会話を通して、スタッフの意見を引き出したり、言い回しを一緒に考えたりしました。それが徐々に実を結んで、キャンペーンの成功につながったのではないかと思います。
店販やプラスメニュー提案での成果を自信に、得意のデザインカラーの技術を強化していきたい
―― 最後に、今後の展望について教えてください。
吉田:店販やプラスメニューの提案での成果が若手の自信やモチベーションにつながることが分かったので、引き続きサロン全体で団結して取り組んでいきたいです。また、若手育成のために幹部間で連携をとるようになってから、各年代の層がしっかりとし、組織としても強くなってきたと感じます。今後はよりスタッフの層を厚くしていくことが重要だと思っています。
―― スタッフの層を厚くしていくことは、どのような点で重要なのでしょうか?
吉田:サロンのビジョンを伝えていくためですね。例えば、代表の私が若いアシスタントに「ZOEYをこうしていきたいんだ!」とビジョンを語っても、なかなか伝わりにくいと思うんです。でもそれが、近い存在である先輩の言葉であれば、熱量は伝わると思うんですよね。
私がZOEYの将来ビジョンを設計し、それを幹部に伝え、その目標に向かって一生懸命取り組む先輩たちの姿を見て若手も頑張る。アシスタントたちもスタイリストの姿勢を受け継ぎます。このようにバトンを渡していくために、各層の人材をしっかり育て、定着させ、層を厚くしていかないといけないなと感じています。
また、当サロンでは、ママスタイリストも時間の制約がありながら売上を伸ばしています。その姿を見て、若手スタッフたちは将来の理想像を描いているとも思いますね。
―― なるほど。そうして層の厚さが働きやすさにつながっていくんですね。
SHIZUKA:年齢、性別、関係なく輝けるのがZOEYの魅力だと思っています。スタッフそれぞれスタイルや個性が違いますが、みんなが貪欲に頑張っていて、それがサロン全体に広がっていると感じます。
吉田龍平Ryuhei Yoshida
ZOEY代表
長崎県出身。福岡ベルエポック美容専門学校卒業後、2018年に福岡・警固に「ZOEY」をオープン。現在は、ヘアサロンにとどまらず、アイラッシュやネイルサロンを含め、6店舗を展開している。
Instagram:@ ryuhei__yoshida
SHIZUKA
ZOEY daimyo店 店長
福岡県出身。福岡ビューティーアート専門学校卒業後、「ZOEY」入社。入社 5 年目でZOEY daimyo 店の店長に就任。韓国が好きで、1人で渡韓し、スタイルを研究。本場韓国スタイルを軸に似合わせのヘアスタイルを提案している。
Instagram:@shizu_ZOEY
アリミノ営業担当者のコメント
ZOEY様は、今、九州エリアで注目されているサロンの1つです。離職率が低く、若手スタッフも活き活きと活躍されています。若手からベテランまで一人ひとりが自分に与えられた役割を全うし、目の前の目標を達成することで、組織全体として大きな目標を達成されています。ZOEY様の人気や強みはこの組織力にあると感じました。また、ZOEY様の『層を厚くする』という考えはどの組織においても非常に大切だと私自身とても共感しました。
いろいろなサロン様にご訪問させていただく中で、若手美容師さんの育成に悩んでいるというご相談は非常によくいただきます。アリミノではサロン様のお役に立てるよう、さまざまなご提案やサポートをご用意していますので、ぜひ営業担当にお声がけください。
西日本営業部 福岡支店 千嶋将史
「ZOEY daimyo」サロン情報
福岡中心部に最大級の広さとくつろげる上品な店内で、高品質の施術とデザインを提供。一人ひとりに似合うヘアを提案し、ファッションとリンクさせたデザインカラーを得意とする。
店舗展開 | 3店舗 |
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従業員数 | 26名 |
サロンコンセプト | すべてのお客様が笑顔になり、幸せになれる美容のお手伝いをする |
サロンターゲット | 20〜30代を中心とした女性 |
「ZOEY daimyo」 店舗情報
所在地:
〒810-0041
福岡県福岡市中央区大名1丁目1-23 remix大名4F
Webサイト:https://zoey-group.com/
Instagram:https://www.instagram.com/zoey_daimyo/
(取材・執筆/橘川麻実、編集/A PRESS編集部、撮影/高松竜二)