December北田流・20〜30代のお客様をファンにするサロンのメソッド ――セミナーレポート
美容業界全体の技術力が向上し、さらにSNSを活用した集客が一般化している昨今、お客様から選ばれるサロンとして成長していくためには、中長期的に「ファン」を増やしていくことが欠かせません。既存のお客様がサロンのファンになれば、その評判が口コミによって広まり、新規顧客獲得にもつながっていきます。お客様にサロンのファンになっていただくためには、技術やデザインはもちろん、サロンの雰囲気や理念を好きになってもらうことが大切です。では、どのように「そのサロンらしさ」を伝えればよいのでしょうか?
そこでアリミノでは、サロン立ち上げ当初から若い年齢層をメインターゲットとして「ファンのつくサロン」を作り上げてきた「December」代表の北田ゆうすけ(きただ ゆうすけ)さんと共同で、サロンブランディングや教育に関するセミナーを開催しています。セミナーでは、Decemberが実際に行っている取り組みや、美容師目線でのファン作りについてお話しいただき、それぞれのサロンにとって最適な「サロン作り」を共に考えていきます。
実際に受講したサロンからは「今どきのスタイルやカラー、撮影のポイントなどを実践でアドバイスしてもらえるのが良い」と好評な本セミナー。今回は、アリミノ社員を対象に体験版としておこなった2時間のオンライン配信セミナーの様子を一部ご紹介します。
大切なのは「理念」と「人」。Decemberの考える、お客様がファンになるサロン作りとは?
前半では、「お客様がファンになるサロン作り」について大切なポイントを、Decemberではどのように取り組んできたのか具体的な例を交えながらお話しいただきました。
December立ち上げ当初から、お店全体にファンがつくサロン作りを意識していたという北田さん。美容師一人ひとりがファンのつくスタイリストを目指すことはもちろん、お客様にサロン全体を「好き」だと思ってもらえることが重要だと話します。
「ファンがつくサロン作り」で北田さんが重視しているのは、「理念」と「人」。何かに取り組むときは戦略やキャンペーンに注目しがちですが、重要なのは「目的にあった取り組みかどうか」だと考えているそう。そのため、その目的となる「理念」をしっかり作り、そこから「らしさ」となるコンセプトを考えることが重要だといいます。
「Decemberの立ち上げでは『ヘアスタイルを通じて前向きや幸せを届ける』という理念のもと、『Decemberらしさ』を考えていきました。僕たちと年齢が近いお客様のほうが自信を持って自身の経験を伝えられると思ったので、ターゲットは26±3歳を想定。売りは、自分が一番得意なデザインが『柔らかい質感』だったことと、自分になぜお客様がついたのかを深掘りした結果、担当のお客様の多くが柔らかさを求めていることに気づき、『質感』に。また、打ち出すスタイルに合わせてお店全体のコンセプトを『暖かい技術・人・空間』としました」(北田さん)
そして、「そのサロンらしさは、スタッフの接客や働く姿勢、ヘアスタイルから滲み出るもの」と話す北田さん。だからこそ、リクルートではサロンの大切にしていることをしっかり伝え、理念に共感してもらうことが大切だといいます。
北田さんはスタッフと向き合うとき、「自分がスタッフのファン第一号になろう」と心掛けているそう。スタッフ一人ひとりを尊重し大切に考える姿勢は、リクルートメッセージ「誰だってみんなこの物語の主役」にも表れています。
「僕自身が真っ先にスタッフのファンになって、みんなの未来を僕が創るぞという気持ちで、リクルートに臨んできました。オーナー自身がスタッフを応援すれば、お客様も一緒に応援してくれるようになるし、応援されたスタッフはお客様の気持ちに応えたいと思って、より頑張れると考えています。そんなスタッフたち自らが、サロンの理念やコンセプトを体現する存在になっていくんです」(北田さん)
「Decemberらしさ」を体現し、20〜30代をファンにするサロンワークと美容師とは?
後半では、ファンのつく美容師とはどのような人間なのか、北田さんがDecemberで実際にスタッフへ伝え、意識していることを詳しく紹介いただきました。
Decemberでは、サロンワークで意識すべきポイントをワンフレーズのキーワードにしてサロン全体で共有しているそう。例えば、Decemberの大切にする「暖かさ」を体現するに当たって、「お客様と担当スタイリストの1:1で終わらせない」ことを意識し、担当者でなくても、周りのスタッフが積極的にお客様に関わっていくようにしています。
「お客様の中には、サロンに行くと緊張して、所在なさを感じてしまう方もいらっしゃるので、できるだけサロン全体に対して親近感を持ってもらいたいと思っています。それに、次にいらしたときに、担当スタイリスト以外のスタッフも自分のことを覚えていてくれたら、きっとうれしいですよね! そういう意味でも、1:1では終わらせないことを大切にしています。サロンみんなで関わっていくことを意識すると、例えば妊婦のお客様がシャンプーに入るときに『お腹が苦しくないように、声をかけてあげてね』とスタッフ同士で伝え合いケアするなど、よりお客様に快適に過ごしていただくための連携が生まれる場面もあるんですよ」(北田さん)
一つひとつに丁寧にホスピタリティを持って取り組んだ先に、ファンがつく美容師・サロンへつながっていくと話す北田さん。Decemberの目指す美容師・サロン像として、「お客様にとって節目に顔が浮かぶ存在になる」「お客様の生活の一部になる」などのキーワードを挙げていただきました。
こうした取り組みと「暖かさ」を大切にする理念はスタッフにしっかり定着し、Decemberはオープンからわずか3年でスタッフ数が4名から17名まで拡大しています。スタッフのサロンへの愛着も強く、離職はほとんどないそうですが、北田さんは「サロンワークに関しては、決して緩いということはなく、むしろ厳しいと思う」と話します。ではなぜ、厳しい環境の中でもみんなの仲が良く暖かい空気が生まれているのか。そこにはスタッフ間でも1:1の関わりではなくチームワークで取り組み、お互いをフォローしあう文化が根付いていました。
「サロンワークでは、指摘の内容も一つひとつ細かく厳しいです。でも、指摘して終わりではなく、別の先輩が『今のはこういう理由で伝えているんだと思うよ』とか、『こういう行動をしてみたら』とフォローするようにしています。また、日頃から理念を伝えているからこそ、『今、厳しく指摘されているのは、単に技術向上のためだけではなく、その先にいるお客様のためにも大切なことだからだ』とスタッフ自身も理解し、納得して取り組んでいると思います。スタッフ同士がお互いに積極的に関わってフォローしあえる環境と理念への共感によって、自然と信頼関係が生まれ、良いチームになっていると感じています」(北田さん)
ほんのひと手間でちょっとオシャレに! お客様へのお土産になる+ONE提案を実演
北田さんのセミナーの特徴は、必ず実技が入ること。これまでセミナーを受けてきた美容師の方々からも「20〜30代の美容師が楽しいと思える技術やデザインの実技とアドバイスがうれしい」「シンプルかつ分かりやすい提案なので明日から実行できる」という声が上がってきました。
今回は、Decemberが取り入れている+ONE提案を実演いただきました。
Decemberでは、ただ施術して完成するだけではなく、ちょっとしたアレンジやスタイリングなど、お客様への“お土産”になるような+ONE提案を行っています。ちょっとしたプラス・ワンが、お客様の喜びやリピートへのつながりになるため、サロンのファンになってもらうために重要な取り組みなのだそう。
「10人中9人のほとんどのお客様は、スタイリングしなくてもいい楽なスタイルを求める傾向にあると思うので、その中で『一個だけ頑張ってやってみて』と、そのサロンらしいご提案を一つプラスできると、サロンとしても美容師としても、他の美容師さんの一歩前を進めると思います。さらにリピート時にも『前回の提案はどうでしたか』と、コミュニケーションにつなげられるんですよ」(北田さん)
実際に、モデルさん2名にその場でカウンセリング。まずは、モデルさんのお悩みや、なりたいイメージを伺いながら、その人の髪が生きるようなプラス・ワンを提案していきます。
ポイントは、その人の髪質やスタイルについて丁寧に説明しながら、どうしたら抜け感や柔らかさが表現できるのか、そしてなぜそれが似合うのかを細やかに解説し、自宅でできる簡単なテクニックで変化を作ること。一口に「柔らかさ」と言っても、一人ひとり抱いているイメージは異なります。その人に似合う「柔らかさ」もさまざま。だからこそ、ただ巻いたり動かしたりするのではなく、その人がどんななりたいイメージを持っているのかしっかり引き出して、実現することが大切だと北田さんは強調しました。
北田さんからのメッセージ「唯一の正解はないから、セミナーでは一つひとつのサロンに合わせて一緒にベストを探していきたい」
最後に、北田さんがなぜ全国のサロンさんへ「ファンのつくサロン作り」のセミナーを行うのか、その想いを伺いました。
「僕たちの理念に共感してくれるサロンさんや美容師さんを全国に増やせれば、例えばお客様が他の地域に引っ越すときや、お客様の遠方にいるご家族やご友人に、そのサロンさんを紹介できる。そうすれば、僕たちだけでは手の届かなかった10倍・20倍のお客様に幸せを届けられます。だから、少しでもDecemberが大切にしていることに共感してくれるサロンさんには、今回のようなセミナーを通して僕たちの経験や技術を伝えていきたいと思っています。
Decemberも立ち上げたばかりの頃は、リクルート時の擦り合わせなどに苦労しました。それでもスタッフとたくさん話して、何度も『僕たちはこれを大切にしています』と言い続け、その伝え方も何度も試行錯誤を重ねてここまできました。美容師を続けていくと、年齢や時代の壁、あるいはオーナーであれば教育の壁など、さまざまな壁が存在すると思います。でもきっと、目の前の壁に一緒に向き合って考えてくれる人がいれば、気づけることもあるはずです。
サロン作りには『こうすれば成功する』という正解はありません。そのサロンさんが何を大切にしたいか、お客様はどのような方々でどんなニーズを抱えているか。一つひとつのサロンさんに合わせて、無数にある打ち手から何がベストかを考えてセミナーを作っていきます。僕の売りは『寄り添う』こと。仲間にお節介焼きだと言われるくらいなので、サロンさんの親身になって一緒に課題解決の方法を考えたり、提案したりしていけるんじゃないかと思っています。『ファンがつくサロン作り』を目指している皆さん、ぜひ一緒に考えて、楽しみながらより良い取り組みを探していきましょう!」(北田さん)
北田 ゆうすけKitada Yusuke
December/laundry 代表
山野美容専門学校卒業。2005年GARDEN入社後13年勤務、サロンブランディングの責任者、表参道店の店舗代表を経て、2018年4月、明治神宮前にDecemberをオープン。2020年10月2店舗目のlaundryをオープン。サロンワークを中心にヘアメイク、各地での撮影講習など、幅広く活躍中。
Instagram:@yusuke.kitada
(取材・文/A PRESS編集部、撮影/保田敬介)
北田さん×アリミノセミナーの情報
アリミノでは、December代表・北田さんと共同でサロンさまへ向けたサロン作り・ブランディング・教育に関するセミナープログラムを提供しています。セミナーの内容は各サロンさまとお打ち合わせの上、個々に合わせてオーダーメイドで作成いたします。セミナーのご希望や詳細については、アリミノ担当営業までお問い合わせください。