よりシンプルなカラーが人気になる! Qilt+LIMでカラー率7割を誇るYoshikiさんに聞く、ブリーチカラーのトレンド傾向とポイント

Aug 11.2021
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近年、安定した人気があるブリーチカラー。2019年までは一部の人が楽しんでいた印象が、2020年に入ると一気に広がり、今ではスタンダードなメニューとして定着してきていると感じていると、大阪からトレンドを発信するデザインサロン「Qilt+LIM(キルト プラス リム)」でブリーチカラーを得意とするYoshiki(よしき)さんは言います。

ブリーチカラーは決して簡単なものではなく「薬剤の理解やダメージへの配慮、カラーコントロールにトリートメント知識といった、幅広い知識とスキルが求められる技術」と話すYoshikiさん。ブリーチカラーで希望の色を作り出す上で重要なポイントとして、薬剤選定の中でも特に色選びとブラウンコントロールを挙げています。この2つのポイントで、特にアジアンカラー フェスのPINKとORANGE、カラーストーリー アドミオ(以下、アドミオ)のシエナを重宝しているそう。

今回は、ブリーチカラーのこれまでとこれからのトレンドの傾向、トレンドの色みを作り出すコツ、またきれいにブリーチカラーを仕上げる薬剤選定のポイントを、Yoshikiさんに伺いました。

CONTENTS

    スタンダードなメニューになってきたブリーチカラー。トレンドは無彩色系からペールトーンに変化

    僕がブリーチカラーを強みとして押し出そうと決めたのは2019年のはじめ。当時はブリーチカラーを強く発信している人はまだ少なく、一部のデザインサロンがインナーカラーやバレイヤージュなどの特徴的なカラーを打ち出している印象でした。お客様も、アパレル系の方など、ヘアスタイルの自由度が高くトレンドに敏感な一部の方が取り入れていたように思います。

    そこから、翌年の2020年にワンメイクのブリーチカラーが一気にトレンドとして広がったと感じています。特に動きが顕著だったのはベージュ系の色みや、ホワイトブリーチなどの無彩色系カラー。スタイルはウルフカットや顔まわりを切り込むデザインが多く見られました。

    この流れは、美容業界全体のブリーチカラーの薬剤性能や美容技術が上がってきたことと、ブリーチカラーを求める方が徐々に増えてきたタイミングが重なったことが大きいと思います。年々、ダメージの少ないブリーチやカラー剤、トリートメントなどの性能は向上し、またブリーチワークを研究してきた美容師さんが発信してくれることが相乗効果となり、美容師の技術も上がっています。また、Instagramなどでブリーチカラーを発信する美容師さんが増えたことで、お客様にも「ブリーチしても艶感のある繊細なカラーが実現できる」という認識が広まったのではないでしょうか。リモートワークの増加によって、ブリーチカラーに挑戦しやすくなったことも後押しになっています。

    2021年に入ってからは、ブリーチカラーは「流行」から「スタンダード」になりつつある印象です。2020年に注目された無彩色のホワイト系は今も変わらず人気ですが、さらにそのホワイトベースの上にうっすらと色を乗せたペールトーンがトレンドに変化しています。特にピンクやブルー、グリーンが人気です。スタイルはボブ〜ミディアムでシンプルにし、艶感を重視してコテで巻いたりせずに自然なデザインにすることが多いですね。

    ペールトーンは、色みの淡さと柔らかな印象、艶感が大切。だけど、淡い色みと艶感の表現を両立するには、事前のブリーチでホワイトベースを作らなければいけないので、難しいんですよ。ダメージを軽減して艶感を引き出すためのトリートメント知識も必要です。また、カラー剤をクリア剤で薄めて作るので、少しの色みの違いが印象を大きく左右します。そのためカラー剤は、通常のカラー以上に特性を把握して選定しなければいけません。

    ペールトーンを作るカラー剤は「クリア剤で薄めたときの発色」「色持ち」「退色のきれいさ」が重要

    カラー剤選定のポイントは、「クリア剤で薄めたときの発色の良さ」「色持ちの良さ」「残留の少なさ・退色のきれいさ」。

    暖色系のカラー剤は、クリア剤で薄めたときに補色として入っている青みや緑みが表に出てきてしまったり、複数の色みが入っている場合は色みによって残留のしやすさが異なり、退色時に意図していない色が残ってしまったりすることがあります。そのため薬剤を選ぶときは、ただ出来上がりの良さで判断するだけではなく、残留の仕方まで見極める必要があります。

    僕が暖色系で重宝しているのが、アジアンカラー フェスの「12/14 PINK」と「12 ORANGE」です。

    この2色はクリア剤で薄めたときも寒色系の色みが出ることなく、そのままの印象で薄くなっていきます。だから、組み合わせて自由に色みを表現しやすいんです。次回施術時の残留も少なく、きれいなブロンドに退色していくのも大きな魅力です。また、PINKは特に発色が良く、色持ちも良い。ORANGEを使うときも、PINKを少し組み合わせることで、より色持ちが良くなります。

    この2色の組み合わせで、暖色系のブリーチカラーはほぼカバーできるんですよ。僕は今、暖色系のブリーチカラーはほとんどこの2色で作っていますね。PINKとORANGEを使うようになってから、作れる色の幅が広がったと感じています。

    左:PINKで作ったカラー/中央:ORANGEで作ったカラー/右:PINKとORANGEを組み合わせたカラー

    また、薬剤の塗布の仕方も、きれいにワンメイクのブリーチカラーを作る上で重要です。暖色系の場合はダメージの高い毛先から先に塗布するのがポイント。毛先は色が抜けやすいので先に色を乗せてしっかり定着させた後、時間差で根元を塗れば、根元から毛先まできれいに色がそろいます。

    ブリーチカラーで欠かせない「ブラウンコントロール」。薄めても温かみのあるカラー剤は手放せない

    ペールトーンを作る上でもう一つ重要なポイントが「ブラウンコントロール」です。近年は1本で希望色に染め上げるカラー剤も多いのですが、ブリーチカラーの浸透により履歴が複雑なお客様が増えてきたため、土台となるブラウンコントロールの重要性を感じるようになりました。

    脱染剤やブリーチを重ねて調整する選択肢もありますが、それだとダメージが大きくなりますよね。そこでブラウン系のカラー剤を使って根元と毛先のベースをそろえるブラウンコントロールが、どれだけきれいに希望色を引き出せるかどうかの鍵になります。いろんな美容師さんと話したりセミナーを受けたりしていると、ブリーチカラーが上手な人はみんなブラウンコントロールをしっかりしているなと思いますね。

    ブラウンコントロールで僕がよく使っているのは、アドミオの「シエナ」です。度重なるブリーチで毛先が明るくなっている場合は毛先の薬剤にシエナを組み合わせ、根元はシエナを加えていない薬剤に。反対に、毛先にピンク系の残留があってオレンジみが出てしまっている場合は、根元の薬剤にシエナを組み合わせて全体のオレンジみをそろえます。2カップに分けるのが難しいときは、全体にシエナを組み合わせるだけでも、根元から毛先までベースがきれいに暖色ブラウンに整い、色のブレを抑えやすくなります。

    シエナがブラウンコントロールに使いやすいのは、どんなに薄めても温かみのある色だから。これまでブラウン系のカラー剤の多くは、クリア剤で一定以上薄めていくと緑みが出てきたり、寒色ベースだったりしていました。でもシエナは、どんなに薄めても温かみがあり、柔らかい印象を作れるんです。まろやかな温かみを感じるのは、ほんのりとオレンジみが入っているから。おそらくこのオレンジみが毛先に残留しやすい暖色の色みと近いため、ピンク系の残留がある場合のブラウンコントロールにも使いやすいのだと思います。

    シエナでしっかりブラウンコントロールして施術すると、他のお店でカラーを断られてきたお客様でも、「あの難しそうなベースから、ここまできれいな一色になった」と喜ばれことが多いです。そのお客様がご友人に紹介くださり、次の新しいお客様につながることもあるんですよ。

    今後のブリーチカラーのトレンドは「外国人の地毛のような淡いブラウンオレンジ」。シエナの単品使いに注目

    ブラウンコントロールで使ってきたシエナですが、今はシエナ単品でのブリーチカラーにも注目しています。

    今後のトレンドは、これまでのペールトーンよりもさらにシンプルなスタイルに変化していくと考えています。今、雑誌や街の女性を見ていると、50年代スタイルのファッションがトレンドになってきているので、ヘアスタイルもファッションに合わせたものが注目されてくるはず。50年代のスタイルでは、ハリウッドスターのようなブロンドや淡いブラウンオレンジが多いため、今後は外国人の地毛のような温かみと柔らかさを感じられるブラウンに人気が集まると見ています。

    いずれもブリーチ毛にシエナ単品でカラーしたデザイン

    この柔らかくしなやかな印象は、寒色系や、薄めたときに緑みや青みが出てくるブラウンだとなかなか生み出せません。寒色が入ると、パキッとした強い印象になってしまいます。だから、これまではナチュラルな印象のほんのりとしたブラウンを作るのはすごく難しかったんです。

    でも、シエナなら単品をクリア剤で薄めてブリーチ毛へ塗布するだけで、特有の温かみが生きて柔らかくしなやかな印象になります。ブリーチカラーでも派手な印象になりすぎず、ナチュラルなブラウンに仕上げられる。これまでのブラウンは薄めると寒色に振れることが多かったので、淡くても暖色を保てるブラウンのカラー剤は貴重ですね。

    18Lvまでリフトしたベースに6シエナ:クリア=3:1で塗布した毛束

    反対に寒色を作りたい場合も、アドミオのオークルにシエナを組み合わせると、オークルの緑みをシエナのオレンジみが和らげてくれて、バランスの良い寒色ブラウンになります。また、退色もオークルの緑みをシエナが打ち消してくれるので、きれいに抜けていきやすいんですよ。

    シエナの使い方次第で同じ淡いブラウンでも季節や気分での変化も提案できますし、残留があって一度では暖色にできないときにオークルとシエナの組み合わせを一回間に入れる提案もできる。寒色寄りと暖色寄り、どちらの選択肢も持っておくのは、提案の幅が広がるので大切だと思います。

    使い勝手のいい薬剤できれいに作る手段が増えれば、ブリーチカラーがどんどん楽しくなる

    ブリーチカラーは、「ダメージレスな薬剤選択と施術」「カラーコントロール」「トリートメントの知識」といった、幅広い知識とスキルが求められます。決して簡単な技術ではありません。僕もブリーチカラーをはじめたばかりの頃は、ミスばっかりで自分の作る色に納得いかないことが多かったです。

    でも、アジアンカラー フェスのPINKとORANGEやアドミオ シエナによるブラウンコントロールなど、ブリーチカラーをきれいに作る手段を増やしてきたことで、成功率が上がってきました。そうすると「こんな壁を超えた」「こんな難しい色を実現できた」と、どんどんブリーチカラーが楽しくなってきます。それに、複雑な履歴のお客様ほど、きれいに仕上がったときに喜んでいただけるので、やりがいも大きいです。

    今後はさらにダメージに配慮した施術をするために、より知識をつけていきたいです。Qilt+LIM全体でも常に良い薬剤や技術を探し求め、お客様に還元していこうと考えています。新しい薬剤は、その良さが分かるまで毛束をたくさん染めるなどしてしっかり研究し、試し尽くす。新しいものをどんどん試しながら、良いと感じるものをどんどん取り入れて、常に最新のクオリティーを提供していきたいですね。

    Profile
    Qilt+LIM Stylist Yoshiki

    Yoshiki

    Qilt+LIM Stylist

    東京都内1店舗を経て、2016年にLIM入社。ロンドンの「TSURU+LIM」で2年間のアシスタント、スタイリストを経て、2018年より大阪の「LIM+LIM(現Qilt+LIM)」に所属。過去には2年間、LIM統括ディレクター・カンタロウ氏の元で弟子生活を経験した。ブリーチカラーに定評があり、入客の約7割はカラー客、そのほとんどがブリーチカラーという施術率を誇る。

    Instagram:@yoshiki_lim

    Qilt+LIM|大阪・梅田から発信。新しい“あなた”に生まれ変わるお手伝いを全力でするサロン


    住所:〒530-0001
    大阪府大阪市北区梅田1-12-6 E-ma 4F
    Webサイト:https://www.lessismore.co.jp/qilt


    「Qilt+ LIM」は、大阪の中心地・梅田でグルメやシネマ、ファッションがそろう施設「E-ma[イーマ]」内の、トータルビューティーを提供する空間「biiq(ビィーク)」にあるサロン。「Qilt」とは、「きるひと」という意味。新しい服をきるように、悩みを断ちきるように、思い切って髪をきるように、再びスタートをきるように……さまざまな“きる”への願いを込めて、ヘアから全力でお客様が新しい“あなた”に生まれ変わるお手伝いをしています。

    (取材・文/A PRESS編集部、撮影/張田亜美)

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