美容師も写真家も、誰かを肯定してあげる職業。写真家・小林真梨子『#日常のdAnce.』展インタビュー

Jan 27.2021
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アリミノが新たに発売したスタイリングブランド「dAnce. | ダンスデザインチューナー」。2020年12月、この発売を記念してSNSでも人気の写真家・小林真梨子さんによる写真展「『#日常のdAnce.』ダンスデザインチューナー×小林真梨子 写真展」を開催しました。

小林さんが撮影したのは、美容師、学生、編集者といったさまざまな職業の20代の姿。「ダンスデザインチューナー」を使ってスタイリングをした彼らが、日常を舞台に自分らしく生きる姿を軽やかに切り取っています。

「美容師と写真家は、どちらも『新しい自分』を見せてあげることで、その人を肯定してあげる仕事」と語る小林さん。自身の美容師やサロンとの関わりや普段の撮影で感じている人とヘアスタイルの関係について、そして『#日常のdAnce.』展についてうかがいました。

「髪型一つで、人ってこんなに変われるんだ」撮影で感じてきたヘアの力

これまでにたくさんの方を撮影してきましたが、そのたびに思うのが「髪型一つで人ってこんなに変われるんだな」ということです。

以前、現場に入ったときはふんわりしたかわいらしい雰囲気だったモデルさんが、ヘアメイクでキリっとしたメンズライクな雰囲気に変身したことがあったんです。モデルさん自身もスイッチが入ったみたいで、表情も完璧で圧倒されました。モデルさんの変化でチーム全体の空気も変わって気合が入りましたし、すごく感動したのを覚えています。

いつもと違う服を着て、しっかり髪をセットすると、外見だけじゃなくて気分まで変わる。そうやって「印象」や「気分」を作り出せるのがヘアスタイルなんだと思います。

私は大学生の頃から友達にずっと髪を切ってもらっているのですが、いつも色や希望の雰囲気は伝えるけど、カットは全部お任せ。この前も、「サーファーっぽく」とざっくりニュアンスを伝えただけで、私のイメージを瞬時に理解してくれたんですよ。友達としても美容師としてもすごく信頼しています。

最近はカラーとカットでサロンを使い分けています。別のセンスの良い美容師の友達にもお願いしてみたいなって思っていたのですが、ずっと髪を切ってくれている友達に申し訳なくて長い間葛藤していたんです。しかしあるとき、思い切って気になっていた美容師さんのサロンに行ってみたら、そのはじめてお願いした子が「美容室は気分で変えていいんだよ」と言ってくれて。洋服みたいに使い分けていいんだと思うと、ヘアスタイルを考えるのももっと楽しくなりますよね。

美容師も写真家も、誰かの「新たな自分」を見せてあげられる職業

髪質や似合う・似合わないもある中で、その人にぴったりのヘアスタイルを作り出す美容師さんのことは本当に尊敬しています。それにサロンではいろんなお客さんと会話をするじゃないですか。私は今でこそ写真を通じてコミュニケーションができるけど、もともと話すのが得意じゃないので、すごいなって(笑)。

一方で、美容師と写真家には似ているところもあると感じています。それは、モデルさんや被写体に「新しい自分」を見せてあげられること。

美容師はヘアスタイルを変えることでこれまでと違った雰囲気を作り出すことができるし、写真家は写真を撮ることで、その人に「この角度だと私ってこんなふうに見えるんだ」「こんなに良い表情ができるんだ」と伝えることができます。その人自身も知らなかった一面を発見させてあげられるのは、共通していると思いますね。

みんながみんな、自分に自信があるわけではないと思います。でも、新しいヘアスタイルが似合っていたり、写真に写った自分が良い表情をしていたりすれば、少しは自信を持てるようになるはず。美容師と写真家は、そうやって肯定してあげることができる職業なんだと思います。

『#日常のdAnce.』展では、モデル以外の人の撮影に思い切って挑戦した

『#日常のdAnce.』は、アリミノさんからお話をいただいて実現した展示です。学生や美容師、編集者など、様々な職業の20代を撮影しました。

私は写真を撮るとき、いつも「私から見たその人の魅力」が伝わる一枚を撮りたいと思っています。被写体とカメラマンというより、友達のような近さでありたいんです。そのため、構図やイメージを撮影前に固めることはありません。撮影前や撮影中にできる限りコミュニケーションとって、その中で「この人は、この角度が一番魅力的だな」と思える角度や構図を探すようにしています。

今回の「日常」というテーマは、そういった日頃の私の作風にもあった企画だったことが嬉しくて、「やってみよう!」と決意しました。

とはいえ、最初は不安も大きかったんです。私は普段、モデルとして活動している方を撮影することが多いのですが、今回はそれ以外の職業の人がほとんど。撮られ慣れていない人が多いだろうし、うまく表情を引き出せるかなって。

でも、はじまってみたらそんな心配は杞憂でした。みなさん初対面でしたが、中には私を知ってくれていたり、共通の知人がいる人もいたりして、すぐに打ち解けられました。「どうしたらいいですか?」「ここで撮るのはどうでしょう?」と積極的に歩み寄ってくれる方もいて、時間は短かったけど充実した撮影ができたと思います。できあがった写真にも、笑顔やリラックスした表情がたくさん写っていました。

一方でみなさん、ただ気を抜いているわけではなくて、やっぱり体のどこかでは「撮られている」という緊張感もあったと思います。そのおかげでリラックスと緊張のちょうどいいバランスがとれて、いきいきとした雰囲気になりました。改めて、思い切って今回の企画に挑戦して良かったなと感じています。

自然なコミュニケーションを通して日常の雰囲気を切り取るように撮った写真には、映像のような動きが見えていると思います。写真を見た人に、その時の空気や音、季節感が伝わったら嬉しいですね。

一人ひとりの魅力を引き出したのは、ヘアスタイリングの力も大きかったと思います。今回の撮影では、みなさん「ダンスデザインチューナー」を使ってスタイリングをしています。スタイリングの様子も見させてもらったのですが、セット前と後でまったく雰囲気が変わることに驚きましたね。ヘアスタイルが変わっただけで、みなさんの気持ちが明るくなるのを感じました。

写真は額装せず、布にクリップで留めるというちょっと変わった展示方法にしていますが、これはアリミノさんからの提案。展示の仕方にもアイデアをもらえるのが新鮮で、その意見を取り入れさせてもらいました。

写真が額に飾られていると「見るぞ!」と構えてしまうかもしれないけど、これなら軽い気持ちで向き合うことができますよね。「日常」という今回のテーマにぴったりだし、風が入ってくると写真が揺れるのも軽やかで良いなと感じます。

誰かの「心の拠り所」になる写真を撮っていきたい

2020年はコロナの影響で、写真展を開催するのも今回が久しぶりでした。きっと、みなさんも大変だったり不安がいっぱいだったりする日々だったと思います。だからこそ、展示に来てくれた人に安らぐ気持ちになってもらいたいと思って撮っていました。展示には来られなかった人も、SNSなどで私の写真を見て、心が休まる一枚を見つけてもらえたら嬉しいですね。

自分や知っている人が写っているわけではないのに、不思議と「いいな」と思える写真ってあると思うんです。私もたまに「写真を見たらリラックスできました」「元気が出ました」といったメッセージをもらうことがあります。そう思ってくれる人がいるのは、とても励みになります。

写真を通して、人に元気を与えられる仕事がしたいと常に思っています。私自身が写真や映画、舞台を見て、救われる気持ちになったことが何度もありました。そんなふうに心の拠り所になる写真を、これからも撮っていきたいです。

Profile
写真家 小林真梨子

小林真梨子Mariko Kobayashi

写真家

1993年、東京生まれ。大学入学をきっかけに写真を始め、「楽しいこと」を追求しながら写真を撮っている。月刊誌『MLK』を制作するほか、アパレルブランド等の撮影も行う。また、現在はフリーのフォトグラファーとして撮影だけでなく、キャスティングも行う。初の写真集『ふれる、ゆれる。』販売中。

Instagram:@marinko5589

(取材・文/小沼理、撮影/河野豊)

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