カラー顧客の約8割が「ゼロテク」を選択、施術の満足度がアップ! 新たにカラーに挑戦するお客様も生まれ、提案の幅が広がった ――odd-jobs
広島県内に複数店舗を展開する「odd-jobs(オッドジョブス)」では、2020年夏から「ゼロテクニック(以下、ゼロテク)」をカラーのスタンダードメニューとして、全てのお客様に提案しています。
「ゼロテク」とは、カラー剤が頭皮に付かないよう、コームで根元ギリギリの位置から塗布するテクニック。アリミノが40年ほど前から提唱しており、カラー剤の付着による頭皮の乾燥や違和感に配慮した施術方法です。
ゼロテクをグループ内で率先して導入した「odd-jobs KUM hair & make」店長兼トップスタイリストの若林直樹(わかばやし なおき)さんは、「ゼロテクで頭皮環境に配慮することは、長くお客様とお付き合いしていくのに必須」だと話します。
現在では、カラー希望のお客様の約8割がゼロテクを選択。今まで感じていたかゆみが軽減されたと好評だそう。ゼロテク導入をきっかけに、これまで頭皮ダメージを気にするあまり、カラーに消極的だったお客様がヘアカラーにチャレンジしてみたり、頭皮ケアへ関心を抱くようになったりしたお客様もいらっしゃるといいます。今回は、ゼロテク導入の経緯や成果、また導入時の工夫やお客様の反応などを若林さんに伺いました。
店舗展開 | 広島県内に7店舗(ほか、エステサロン1店舗を含み8店舗を展開) |
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従業員数 | 52名 |
サロンコンセプト | 一人ひとりのお客様の一生涯のお役に立てる美容家 |
サロンターゲット | 30〜40代の美に関心がある女性 |
ゼロテク導入年月 | 2020年 夏ごろ |
導入前の課題 | お客様からカラー施術中にカラー剤が頭皮にしみるという声や、帰宅後に頭皮のかゆみを感じるという声があった |
導入のきっかけ | 頭皮環境について学ぶなかで、カラー剤による頭皮へのダメージに疑問を抱いた |
ゼロテク施術ターゲット | カラー施術の全てのお客様 |
導入前の課題:施術中にカラー剤がしみて、対応が慌ただしくなることも。帰宅後にかゆみを感じるお客様もいた
これまで、カラーで過去にしみたことのないお客様には、基本的にハケで塗布していました。ただ、まれに塗布後の放置中に「しみる」と言われることがあり、そうなるとサロン内が対応に追われて慌ただしくなってしまう。また、一度カラー剤がしみたお客様はそのことをカルテに記録し、次回はカラー剤の塗布前に頭皮に保護クリームを塗るようにしていましたが、どうしても保護クリームを塗る時間と手間がかかっていました。
ほかにも、リピートのお客様から「前回カラーしたとき、帰宅後に頭皮がかゆくなっちゃって…」と相談されたこともあります。カウンセリング時の確認で「特にしみたことはない」とおっしゃるお客様でも、実はあとから頭皮にかゆみが出ている方が少なくなかったんです。
当店のカラー比率は40~50%。多くのお客様が施術を受けられるメニューということもあって、より快適にカラーを受けられるようにできないかと考えるようになりました。そこで、カラー塗布技術「ゼロテク」を全てのお客様を対象としたスタンダードメニューへ本格的に導入しようと検討しはじめました。
導入した理由:長くお客様とお付き合いする上で、カラー施術において頭皮環境に配慮した技術の必要性を感じていた
ゼロテクの本格導入を考えたのは2020年の春ごろ。カラーとは別に頭皮ケアのメニューを展開するにあたって、頭皮環境について改めて勉強したことがきっかけです。勉強するにつれて、カラー剤が頭皮に与えるダメージと、これまでの塗布方法に対して、さらに疑問を抱くようになったんです。
頭皮にカラー剤が付着すると、頭皮の水分量が失われ乾燥しやすくなります。頭皮の乾燥はかゆみやフケといったトラブルにつながるばかりでなく、将来的に白髪が増えやすくなる可能性もあります。おしゃれ目的で、あるいは白髪を隠すためにカラーをしているのに、その施術が頭皮に負担をかけ、結果的に白髪の増えやすい環境につながっているかもしれない。それは、美容師の仕事としておかしいと感じていました。
お客様が年齢を重ねていけば、髪や頭皮のトラブルも増えてくると思います。お客様と今後も長くお付き合いしていくためには、そのトラブルを解消し、お客様の頭皮環境を守ることが重要だと考えました。
そこで注目したのが「ゼロテク」でした。コームで根元のギリギリから塗布していくゼロテクなら、頭皮にカラー剤が付きにくい。カラー剤によるダメージで頭皮が乾燥する可能性も軽減できます。
もともと敏感肌の方には以前からゼロテクで施術することもあったのですが、ほかにも白髪に悩む方、ファッションカラーやブリーチをする方など、全てのお客様にとって頭皮環境はとても大切なもの。ゼロテクでのカラー技術を提供できれば、頭皮環境を守りながらヘアスタイルをより楽しむための手助けができると考えました。
導入時の工夫:ゼロテクの良さをお客様にしっかり伝えることを重視し、実践の場も増やした
「ゼロテクをやってみようと思う」とスタッフに伝えたのは、サロンワークの休憩中でした。みんな「分かりました」と素直に受けとめてくれましたね。普段からより良いと思った技術や製品を積極的に取り入れていることもあり、常にサロンとして前向きに対応していく習慣がついているのだと思います。
サロンのみんなで物事に取り組むときは、スタッフが長く継続できる環境が大切だと思っています。そのために大切なことの一つが、強要されて取り組むのではなく、スタッフ自らが意義を感じて動くことです。だから、スタッフへの教育では、ゼロテクのメリットをしっかり伝えることを第一に意識しました。ゼロテクが良いものだと納得してもらえれば、浸透していく。反対にそこを疎かにすると、サロン全体に浸透せずに一時的な取り組みに終わってしまうと考えたんです。
また、技術習得の環境が整っていることも大切です。そこで、僕自身が積極的にリーダーシップをとってトレーニングの機会を作ったり、スタッフの様子を見たりと、ゼロテクに取り組みやすい環境作りに専念しました。技術習得までの目安は約1ヶ月とし、週に1〜2回や毎朝30分ほどの練習をしたり、アリミノの講習を受けたりといったトレーニングを行いました。
トレーニングを見ていて「そろそろ大丈夫だな」と思えるスタッフには、僕がお客様に説明した上で、「今日はゼロテクでお願いします」と指示し、実践する機会を増やしていきました。なかにはまだ慣れていないと感じていたり、少し不安を感じていたりするスタッフもいたかもしれません。でも、実際にお客様へ提供していかなければ技術は向上していきません。だから実践回数を増やすことで慣れてほしいと思っていたんです。もちろん、不安な部分や技術の足りない部分は、僕が一緒に入ってフォローしていました。
技術向上と同様、もしくはそれ以上に重視したのが、お客様に対するゼロテクの特徴やメリットの伝え方でした。スタッフ間での説明内容の齟齬が生じないように、共通のPOPを作成。お客様との会話が苦手なスタッフはPOPをうまく利用して伝えられるように訓練し、まずは一人ひとりがしっかりとゼロテクを提案できるようになることを目指しました。特にハケとコームでの塗布の違いを説明できるように意識しましたね。
また、当初からグループ全体へもゼロテク導入の利点を伝えてきました。当店が先導して導入を進め、幹部会で毎回ゼロテクのメリットと状況を共有。導入店舗は少しずつ広がっていき、今では全店舗で本格展開しています。
お客様への提案のコツ:全顧客にDMで案内。頭皮スコープを使った頭皮診断を経て提案することも
ゼロテクは美容師にとっては有名な技術ですが、お客様の多くは技術名までは知りません。そこでPOPを作成するときに「オリジナリティーを出しつつ、よりシンプルで伝わりやすくしたい」と思い、メニュー名を「ゼロトフ」として打ち出しました。「根元ほぼ0mmからの塗布で『ゼロトフ』」と、説明しやすいんですよ。
2020年の夏から本格的に「ゼロトフ」をスタートし、全ての既存顧客へDMを送って案内しました。DMをご覧になったお客様が「ゼロトフってなに?」と話題にあげてくださり、「それじゃあ今日試してみましょうか」とゼロテクで施術するきっかけにもなりました。
店舗でも、カラー希望のお客様には全員にゼロテクをご提案しています。POPを使ってゼロテクのメリットとデメリットを明確に伝えた上で、従来のハケでの塗布かゼロテクかをお客様に選んでいただきます。
お客様のお時間があるときは、頭皮診断の資格を持つスタッフが頭皮スコープで頭皮の健康状態を診断しながら、ゼロテクを提案することもあります。お客様ご自身の頭皮が今どのような状態なのかを実際に見ていただき、頭皮ケアの重要性やカラー剤による頭皮への影響を丁寧に説明することで、頭皮環境やゼロテクへの関心につながることも多いです。
ご提案で大切にしているのは、決してゼロテクを無理強いせず、ゼロテクとハケでの塗布それぞれのメリット・デメリットをしっかりご理解いただいた上で、ご自身で納得して選んでいただくこと。
ゼロテクはハケでの塗布に比べると、わずかにですが頭皮のごく付近は塗布しきれない面もあります。そのため、中には「ダメージの軽減よりも、しっかり染めることを優先したい」「今までと同じ方法のほうが安心」とハケの塗布を選ばれるお客様もいらっしゃいます。ハケでの塗布を選ばれた場合は、それ以上ゼロテクをおすすめすることはなく、可能な限り頭皮ダメージに気を配りながら丁寧に施術していきます。また、「頭皮ダメージは気になるけれど、見えやすい場所は根元からしっかり染めたい」というお客様へは、全体はゼロテク、フェイスラインやTゾーンのみハケでの塗布をご提案することもあります。
一方、ゼロテクに関心を抱いていただいても、リタッチ幅が5〜6センチと長い方など施術が難しいケースもあります。そういった場合でも、たまたま来店周期が短くなりリタッチ幅が2〜3センチになったタイミングで「今日はやっとゼロテクでカラーできますね〜!」と盛り上げてコミュニケーションをとります。伝え方次第でお客様もうれしくなるでしょうし、そこからゼロテクの選択や今後の来店周期の短縮などに進展することもあるので、ただ説明するだけでなく、雰囲気や伝え方には気を使っていますね。
導入の成果:カラー客の約8割がゼロテクを選択。頭皮環境に関心を抱き、新たに頭皮ケアメニューを試される方も
現在、カラーのお客様でゼロテクを選択されるのは7〜8割。「カラー後の頭皮のかゆみが減った」「カラー放置中の違和感や不快感が減った」という声をいただくことが多いです。これまでわずかにかゆみがあって頭をかいていたのが減ったという方もいらっしゃいました。多くのお客様がゼロテクを喜んでくださっていることで、実は施術中カラー剤がしみていたけれど、「たいしたことない」と我慢していたお客様が多かったのだと気づきましたね。
また、これまで頭皮ダメージを気にしてカラーを迷っていたお客様が、「ゼロテクなら」とカラーにチャレンジされることもあります。ほかにも、白髪染めのお客様がゼロテクで頭皮ダメージが軽減できることで明るめのカラーへの抵抗感が減り、グレイカラー×ハイライトの組み合わせに挑戦することも増えました。ゼロテクでカラーを楽しめるようになった方や明るいカラーに挑戦した方から「周囲の評判がいい」と聞くこともあります。そういった声をいただくと、スタッフとしてもお客様の次回の来店が楽しみになりますよね。
ゼロテクを導入して1年ほどですが、継続して通っていただいているお客様の髪や頭皮の健康状態は、過度なダメージを与えることなく維持できていると思います。さらに、これまでヘアケアや頭皮ケアへの関心が低かったお客様が、ゼロテクをきっかけに頭皮環境へ興味を持つようになり、ヘッドスパや頭皮クレンジングの施術や、頭皮ケアに関するアドバイスを受けたいという声も増えました。
導入当初は慣れないコームでの塗布に時間がかかっていたスタッフもいましたが、現在はハケでの塗布に比べ、手間や塗布時間にほとんど差はありません。むしろ、施術の途中でのしみやかゆみの対応が減ったので、今では落ち着いたサロンワークができています。最初は手間と感じるかもしれませんが、回数を重ねて慣れれば困ることはほとんどないので、まずは実際にやってみることがゼロテク導入では大切だと思います。
今後の展望:ゼロテク技術をさらに高め、長くお客様のお役に立てる美容師を育てていきたい
最近は、ゼロテク導入をきっかけにスタッフ間での情報共有が増え、よりコミュニケーションが密に行えるようになってきたと感じています。今後もゼロテクでの塗布時間をさらにスピードアップさせるなど、サロン全体でスタッフの育成に力を注いでいきたいですね。お越しくださったお客様の喜びが帰宅後も続くように、より多くのお客様にゼロテクを試してもらえたらと思っています。
また、技術を生かすためにはお客様との間に信頼関係を築くことはもちろん、伝え方が大切。だから、よりお客様への提案の仕方やコミュニケーションの向上に注力したいです。エイジングのお悩みなど、半歩先を見据えた対応を考えながらお客様をリードしていく、お客様のお役に立てる美容師を育てていきたいですね。
若林直樹Naoki Wakabayashi
odd-jobs KUM hair & make店長
広島県出身。2004年にodd-jobsへ入社、2014年「odd-jobs KUM hair & make」店長に就任。お客様の髪質や骨格のお悩みを、理論に基づいて改善する技術を提供している。似合わせカットや、白髪を生かした明るいデザインカラーが得意。「どれだけ切ったかではなく、どれだけ変われたか」を大切にしており、顧客からの信頼も厚い。
アリミノの視点:営業担当から見たodd-jobsさんの成功ポイント
お客様に寄り添いながら、お悩みの解決に留まらず、常に一歩先の提案をされているodd-jobsさん。その「生涯のお役に立てる美容家」という観点から、ご自身の提案するヘアカラーが頭皮の乾燥や血行不良を引き起こしている可能性に敏感に反応し、ゼロテクに取り組まれました。
odd-jobsさんのゼロテク導入成功のポイントは、「スピーディーな技術のレベルアップ」「お客様への丁寧なゼロテクの必要性の説明」「顧客への認知浸透」。中でも、あえてアナログのDMで全顧客へ想いを発信した点は、よりスピーディーなお客様への認知浸透につながった、特徴的な取り組みだと思います。
また、お客様とサロンが一緒になって頭皮への配慮の意識を高めていき、喜びを実感し合ったことも大きいのではないでしょうか。ゼロテクはあくまで一つの技術であり手段ですが、odd-jobsさんのように、その技術・手段によってお客様に対しての想いが伝わることで、想像以上の付加価値や感動が生まれるのだと思います。
(アリミノ 西日本営業部中四国支店 川口晴彦)
odd-jobs|お客様一人ひとりの一生涯、美と心に寄り添うサロン
<店舗情報>
odd-jobs KUM hair & make
住所:広島県安芸郡府中町本町5丁目13-14 1F
Webサイト:https://odd-jobs.co.jp/kum/
「odd-jobs」は「一人ひとりのお客様の一生涯のお役に立てる美容家」という理念のもと、美容室、アイラッシュ、ネイル、エステの4事業でトータルビューティーを提供しているサロンです。現在、広島県内に美容室を7店舗、エステサロン1店舗を展開しています。2019年5月からは独自に開発したAIによるパーソナルタイプ診断を導入し、全スタッフがAI診断師の資格を取得。機械を使って分析した骨格やパーソナルカラーをもとに、理論に基づいたスタイルやファッションのご提案をしています。似合わせのご提案とそれを実現する美容師、どちらも揃っているからこその「トータルビューティー」です。
また、「美容師は心を扱う仕事」と考え、髪だけでなくお客様の想いを大切にしています。「KUM」という店舗名は、「お客様の想いを“汲む”」が由来。その由来通り、カウンセリングでは、お客様の「なりたい印象」を、「爽やか」「柔らかい」「上品」「繊細」といったキーワードで汲み取ります。新しい技術やデザインを身につけ提案していくのはもちろんのこと、お客様と言葉でイメージを共有することで、よりお客様の「なりたい」を実現するスタイルが提供できると考えています。
当初のターゲット層は30〜40代でしたが、現在では地域の幅広い層のお客様にご来店いただき、中には親子三世代で通うお客様もいらっしゃいます。施術中にお子様からご両親には伝えにくい悩みなどをご相談いただくこともあり、そんなときには間に立って仲を取り持つお手伝いをすることも。サロンでは常に、美容に留まらないコミュニケーションが生まれています。(若林さん)
(取材・文/A PRESS編集部、撮影/杉田梨菜)
「ゼロテクニック(ゼロテク)」施術のポイント
アリミノ公式YouTubeチャンネルにて、ゼロテク施術のポイントの解説動画をアップしています。