デザインすることが目的になってはいけない。siki・磯田基徳とjurk・沢井卓也が語るブリーチの現在地と未来

Jan 26.2023
PRODUCTS・SCHOOL

2022年11月、アリミノ本社で開催された、「siki(シキ)」代表の磯田基徳(いそだもとのり)さんと「jurk(ユルク)」代表の沢井卓也(さわいたくや)さんによるセミナー『BLEACH DESIGN×FASHION』。「ブリーチ」と「ファッション」をキーワードに、二人の考える“今の女性像”を表現し、その場で施術・撮影まで実践いただきました。

今回は特別に、満員・大好評だったセミナーの終了後に、お二人の対談が実現! 2サロン合同でフォトコンテストを行うなど、互いに刺激を受け合うお二人に、昨今のブリーチ人気や今後のトレンド、薬剤の選び方についてなど、ブリーチに関するあれこれを熱く語っていただきました。

「jurkの東京進出は、黒船、ペリー来航!」「sikiと磯田さんは、今どう世間を見ているのか、そのフィルターが気になる存在」

―― お二人は、サロン内のフォトコンテストを合同で行うなど、普段から交流があるそうですね。

磯田さん(以下、敬称略)沢井さんとは馬が合うというか。なにかとよく話していますね。

沢井さん(以下、敬称略)そうだね。つくるデザインやサロンコンセプトは違うんだけど、世代も近いし、美容や美容師のあり方、サロン経営に関する考え方は通じるところがあるんじゃないかと思います。

磯田今日、セミナーを一緒にやらせてもらった中で、沢井さんが「幅を持つことが大切だ」って言っていたのが、聞いていて嬉しかったですね。僕もいつも思っていることだったので、その答え合わせができたようで。すごく楽しかったし、いいセミナーだったと思います。

―― お互いに、美容師として、どのような印象を抱いていますか?

磯田沢井さんは、ヘアにとどまらずファッションも合わせて新しいジャンルをつくった人だなと思います。それが名古屋発なのが面白いですよね。東京に進出するサロンはたくさんありますけど、東京で新しい価値をつくるサロンって今までなかった。だから、jurkが名古屋から東京に進出するって聞いたときは、「うわ、黒船来航だ!」って思いました。

沢井僕から見た磯田さんは、彼のフィルター、つまり彼が今どのように世間やトレンドを見ているかっていうのを、世の中のみんなが気になっている存在。特に美容業界では、磯田さんやsikiの影響をすごく受けている人が、たくさんいると思うんですよ。ただ僕は、影響を受けてはいるけど、受けすぎないように意識してはいますね。デザインとか見ていると真似したくなっちゃうから、あまり見過ぎないようにしているというか。

磯田それはあるかもしれないね。逆にタイプの違うサロンだからこそ、仲が良いのかもしれません。交流を通して普段はない発見があるし、それでも全部を真似るのではなく、それぞれのスタイルに合うなって感じる部分だけを吸収できる。その上でスタッフの熱量が互いに高いから、ちょうどいい刺激を与えあっているんじゃないかな。

ブリーチは定番化して、ひとつの文化へ。今後はさらに変化を遂げ、成熟していく

―― 今回のセミナーはブリーチオンカラーとファッションについてでしたが、実際のサロンワークの中で、ブリーチの需要は伸びてきていますか?

磯田そうですね。ブリーチ需要に関しては、伸びてきているというよりは、すでに定番化してきているんじゃないでしょうか。まだまだお仕事の関係などでブリーチをする人は限られてはいますが、それでも一般的なメニューとして定着してきていると思います。

沢井そうですね、すでに文化になってきているというか。

―― ブリーチを生かしたデザインのトレンドは、どのように変化してきているでしょうか?

磯田ここ最近は、「ブリーチオンカラーといえば、ペールトーン」という印象があったと思うのですが、ある程度定番化してきた中で、僕自身は今後、ブリーチを使ったダークトーンのカラーにも挑戦していきたいと思っています。さらに一歩先を行く勇気というか、新たな提案というか。そういった意識もあって、今日のセミナーではダークトーンのブリーチオンカラーをつくりました。

磯田さんによる当日のセミナーでのデザイン。ダークトーンのベースに、差し色でアイスブルーを。

磯田僕はもともと暗い髪色が好きで、単純に「黒髪って可愛いじゃん」という気持ちもあります。また、これからパーマの需要も増えていくと見ているので、より艶感を表現できるダークトーンの需要が高まる気がしますね。

コロナ禍でのストレス発散や最近のブリーチブームもあって、しばらくは「大胆に髪色を変えたい」という人が多かったのですが、ようやくそれも落ち着いてきて、これからは「髪や髪色をきれいに保ちたい」という人が増えてくる気がします。ブリーチを生かし、ちょっとしたデザインも入れつつ、髪がきれいに見えるカラーが注目されていくのではないでしょうか。

沢井ブリーチという施術自体は定番化してきていますが、デザインや色み、好まれる明るさは時代に合わせてどんどん変わっていくでしょう。そうやって変化を重ね、一言で「ブリーチ」といっても、施術方法や薬剤選定などの技術もデザインも選択肢の幅が広がり、ますます成熟していくように思いますね。

沢井さんによる当日セミナーでのデザイン。退色時にほんのりとしたかわいらしいオレンジみを感じられるようにしています。

ブリーチは、美容師としての幅を出すために不可欠な技術。しっかり抜ける「アリミノ ブリーチ120」の存在は欠かせない

―― お二人のブリーチオンカラーに憧れる美容師さんも多いですが、ブリーチ剤にはどのようなこだわりがありますか?

沢井僕自身は、もともとはペールトーンのようなブリーチオンカラーが得意というわけではなかったんですよ。でも、得意分野とは別で、美容師としての幅をさらに広げるためには、今後、ブリーチデザインはマストだなと。それで挑戦したという経緯があるんです。

磯田なるほどね。やっぱり、美容師にとって“幅”って大切で、そこを意識して広げていくことが欠かせないですよね。

沢井そうそう。それで、技術だけでなくデザインの幅を広げるという意味でも、サロンにはブリーチの薬剤を数種類用意していますね。

磯田ブリーチに力を入れているサロンも増えてきたので、最近だと、ほとんどのサロンでフルパワーで明るくする薬剤と、もう少し柔らかい薬剤の2種類を用意しているんじゃないかと思います。jurkは5種類くらい?

沢井今は6種類置いていますね。「軟毛だからこれ」とか「このトーンまで上げたいからこれ」とか、髪質や用途に合わせて使い分けています。中でもフルパワーで明るくするブリーチはマスト。ただその分、強い薬剤でもあるので、使い方を間違えると髪が傷んでしまう恐れもあります。使い方さえ間違わなければ大丈夫なのですが、髪の状態の見極めやブリーチ技術の高さが問われるところではありますね。

沢井どの薬剤でもそうですが、技術が問われる領域でもあるからこそ、特にフルパワーのブリーチ剤は普段から使い慣れていることが何よりも大事です。僕にとっては、フルパワーで抜けるブリーチの最高峰が「アリミノ ブリーチ120」。履歴や髪質の見極め、塗布の技術、タイミングさえ見誤らなければ、これ以上のブリーチ剤はありませんね。

―― 「アリミノ ブリーチ120」の仕上がりは、どのような点が特長的でしょうか?

沢井まず、とにかくしっかりと色を抜いてくれる。特に、19トーン以上にしたいとき、バージン毛のファーストブリーチや残留が強い髪のブリーチには最強です。ないと困っちゃいますね。

磯田あとはペールトーンにしたいときにも最適だと感じています。sikiでは、ペールトーンをご希望されるお客様には「アリミノ ブリーチ 120」を使用しています。色の抜け方がきれいだから、カラーの発色も良くなるんですよ。

沢井しかも、正しい使い方をすれば、仕上がりがツルっとした手触り感になる。髪をきれいに、ダメージしていないように見せたいというニーズがある今、ツルッと感は大切ですよね。

磯田それから、「アリミノ ブリーチ120」を使うときは、前処理剤の「シェルパ」はマストというくらい、相性いいですね。髪の仕上がりが全然違ってくる。パサつきを感じにくく、ツルツルな手触りに仕上がる印象です。お客様の中で「パサついて見せたくない」というダメージへの意識が高まっているので、ただブリーチを提案するのでは不十分。今後はブリーチと合わせて、よりきれいに仕上げるための前処理などを僕たちから提案していくことが、ますます大切になるのではないかと思います。

ブリーチにとって2剤は命! 「アリミノ ブリーチ120」には「アジアンカラー フェス」の相性が抜群!

―― ブリーチでは、ブリーチ剤はもちろんですが、2剤も重要だと聞きます。

磯田もちろんです!

沢井2剤ってどれでも同じと思いがちですが、実はすごく重要なんですよね。ブリーチ剤との相性が合っていないと仕上がりが全然違っていきます。

―― 「アリミノ ブリーチ120」を使うときは、どのように2剤を選定していますか?

沢井「アリミノ ブリーチ120」は、「アジアンカラー フェス」の2剤との相性が抜群です。さらに、「アジアンカラー フェス」の2剤は、メーカーや強さを問わずたいていどのブリーチ剤とも合わせやすいので、重宝しています。

磯田sikiでも「アリミノ ブリーチ120」を使うときは、必ず「アジアンカラー フェス」の2剤と合わせていますね。地味な部分ではあるのですが、「アジアンカラー フェス」の2剤はトロッとした粘性があるのが、特にうれしいところです。粘性があると薬剤がたれないので、オーバーラップしづらい。狙ったところだけに塗れて、つけたくないところにはつけないで済むのが、しっかりブリーチしたいときには特にありがたいです。

また、「アジアンカラー フェス」の2剤を使うと仕上がりの質感がツルッとするので、ブリーチだけでなく、通常のヘアカラーにも欠かせないですね。

目的はお客様にきれいになってもらうこと。そのためにブリーチを活用して美容師としての幅を広げることが大切

―― ブリーチが得意な美容師さんもどんどん増えていますが、この傾向は続きそうですか?

沢井確かにブリーチを得意としているインフルエンサーの美容師も多いですが、なんとなく「ペールトーンやホワイトをいかにきれいにつくれるか」みたいな競い合いがある気がして。その中からデザインカラーが出てきて、現在の流れになっている気もします。

磯田そうですね。SNS上ではデザインを追い求めることが目的になっているような流れを感じることもあります。美容師としての本来の目的は、お客様を可愛くしたり、きれいにしたりすること。ブリーチはそのための手段、武器のひとつでしかないんだよね。

沢井それを間違えたらいけないよね。お客様は、職業だったり、付き合う人だったり、ライフスタイルによって好みのテイストもどんどん変わっていくもの。今までずっとブリーチ希望だったお客様でも、年齢やライフステージが変われば、トーンダウンしたくなったり、インナーだけにしたいとなったり、ブリーチなしのデザインにしたいとなったり……。そうしたときに、どれだけお客様の状況や希望を汲み取れるか、どんな提案をできるかが、大切ですよね。

希望のテイストが変わったら、ヘアサロン自体を変えてしまうというお客様も少なくないと思うんです。「落ち着いた髪にしたいからもうここのサロンじゃないな」っていう。でも、それってすごく寂しいと思いませんか?

磯田本当にね。「強みを持とう」と意識しすぎると、手段であるはずの技術を一生懸命に磨きがちだけど、目的意識を見失わないようにしないと。自分の得意分野にばかり目が行って、お客様の「テイストを変えたい」「ブリーチをやめたい」といった気持ちに気づけない美容師になってしまったら、結果、お客様が離れてしまうと思います。

沢井大切なのは、幅を広げること。美容師の幅を広げるためには、時間を使って自分でさまざまな技術やデザインを取り入れたり、新しいことや普段の自分とは違うデザインにチャレンジしたりすればいいだけです。もし、お客様とその方のライフステージが変わっても長く付き合っていきたいと考えているなら、そこはきちんと磨いていくべきだと思いますね。

磯田手段か目的かの話でいうと、若手の子たちがコンテストに出て頑張るのはいいことだと思う。でも、中にはそれでサロンワークがおざなりになってしまうこともあって、それは本末転倒だなって思います。

沢井僕は最近、コンテストに出たい欲がまったくなくなってきて。お客様に真剣に向き合ってヘアスタイルをつくり、お客様が可愛いと思っていて、僕が可愛いと思っていれば、それでいいんじゃないかなって(笑)。それこそ、サロンワークって、毎日がコンテストのようなものだから。

磯田「毎日がコンテスト」! 名言! でも本当に、サロンワークって一度の施術が、そのお客様にとってのたった1回の機会かもしれない。その1回が今後も通い続けようか、どんなスタイルにしたいときにこようか決めることにつながるもの。

沢井そうそう。だから、「毎日がコンテスト」の気持ちで、一人ひとりのお客様と向き合っていきたいよね。

Profile
siki代表 磯田基徳

磯田基徳Motonori Isoda

siki代表

都内2店舗を経て、2017年、表参道に『siki』をオープン。現在は6店舗を展開。数々のヘアショー、コンテストでグランプリを獲得するなど、卓越したクリエイティビティで美容師からも一目を置かれる。Instagramを活用する徹底したサロンブランディングも注目の的。

Instagram:@isodango

jurk代表 沢井卓也

沢井卓也Takuya Sawai

jurk代表

2019年4月にファッションとヘアの複合サロン『jurk』を名古屋市内にオープン。2020年、拡張移転と同時にアパレルとネイルが共存した新たなサロン形態を打ち出す。2022年1月には東京都・南青山に2店舗目となる『jurk tokyo』をオープン。ファッションとのトータルバランスを考えたスタイリッシュなヘアデザインを中心に、日常に彩りを与えるようなありそうでなかったデザインやカラーで感度の高い顧客層から注目を集め、モデルやアーティスト、芸能関係者も多く顧客に持つ。クリエイティブな活動と経営者としての手腕の両輪で、業界内外から今後の一層の躍進への期待を集めている。

Instagram:@sawaitakuya

(取材・文/池山章子、取材・編集/A PRESS編集部、撮影/河合信幸)

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Instagram : @asiancolor_fes

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