話題の「チャイボーグ」の大人クールさをアクセントに。モデルさんへの似合わせアレンジを実演! ――bico hibi
ファッション誌やSNSで話題になり、中華コスメブランドが日本に上陸するなど、ますます注目されている「チャイボーグ」。「チャイナ」と「サイボーグ」を掛け合わせた造語で、ミディアムからロングでダークトーンの艶感ある髪、明るく滑らかな肌、キリッとした眉とアイメイク、真っ赤な唇が特徴の中国風のメイクやスタイルのことをいいます。
「チャイボーグ」はその名の通り、サイボーグ並みに人間離れした美しさがあり、隙がない女性を表現したスタイル。一方でキリッとした強い女性像が、人によってはキツい印象になってしまうことも。髪色やメイクのコントラストの強さから本来の肌色やイメージと合わせるのが難しく、日本人の顔立ちや日常生活の中では浮いた印象になってしまいます。
「ただチャイボーグを完全再現するだけではお客様の期待に応えられない」と話すのは、トレンドを取り入れた日常に馴染むスタイルを得意とする札幌のサロン『bico』のスタイリスト藤川和也(ふじかわ かずや)さん。20〜30代前半を中心にトレンドに敏感な層は、チャイボーグの要素をさまざまなトレンドと掛け合わせ、「自分のスタイル」に昇華していると感じているそう。そのため、チャイボーグの圧倒的な美しさやクールな大人らしさを作り出しているポイントを分解し、その要素を生かしながら一人ひとりに似合わせていくことが重要だといいます。
そこで今回は、実際にモデルさんへチャイボーグのニュアンスを取り入れた、似合わせスタイルを施術。前半はヘアスタイルについて藤川さんに、後半はメイクについてbicoの姉妹店『bico hibi』スタイリストのSAKURAI FUNA(さくらい ふうな)さんに解説いただきます!
チャイボーグのニュアンスを生かしたヘアスタイル施術ステップ
施術前(before)
モデルは、2020年のCAMPUS COLLECTION SAPPOROでグランプリに輝いた大屋江里奈(おおや えりな)さん。長身でスラッとした手足、腰まであるロングヘア、愛らしい顔立ちが目を惹くモデルさんです。大屋さん自身は髪をロングにして前髪も伸ばし、幼く見えすぎないようにしていました。
大屋さんの希望は「髪の長さは現状維持、髪色はピンク系」。藤川さんとSAKURAIさんは、ここからどのようにチャイボーグの艶やかさを生かした似合わせで、大屋さんを変身させていくのでしょうか? 各ステップでチャイボーグのニュアンスを取り入れるためのポイント、そして今回大屋さんに似合わせる上で意識したポイントを伺っていきます。
カラー:圧倒的な艶感と透け感を意識しながら、明るすぎないトーンに
藤川さん:チャイボーグの隙のない美しさを作る上で髪に求められるのは、圧倒的な艶感。そのため、カラーでも発色の良さと透明感・艶感をどれだけ表現できるかが重要です。ギラギラした印象ではなく、上品さを感じるグロッシーな印象の艶感を意識しましょう。また、黒髪やダークブラウンなど、ダークトーンなカラーもチャイボーグの特徴なので、明るくなりすぎないように調整します。
今回は大屋さんの「ピンク系」という希望に合わせて、落ち着いたピンクベージュを選択。透明感とピンクの色みは表現しつつ、明るすぎない落ち着いたトーンに仕上げていきます。大人らしいクールさを表現するため、ピンクみを感じつつ暖色に寄りすぎないよう、上品な艶感を表現できるカラーストーリー アドミオの10ライラックに、10オークルを組み合わせました。オークルはグレーみのあるベージュで、暖色に寄りすぎず引き締まった印象ながら、柔らかさも表現してくれます。大屋さんの髪は、前回のカラーが退色したことによる黄みがあったため、ピンクみのある10ライラックを多めにして「10ライラック:10オークル=3:1」で色を作り、全体の色みをそろえました。
トリートメント:髪質に合わせてしっかりと。艶を出しながら重くなりすぎないのがポイント
藤川さん:髪そのものをどれだけきれいに見せるかがチャイボーグの要。カラー後にはしっかりとトリートメントをします。重視するのは一人ひとりの髪質や髪の状態に合わせ、しっかりケアできるトリートメントを選択すること。ただし、重い印象になったり、トップがペタンと潰れたりしないように気をつてください。
カット:毛先は厚め、顔まわりや表面にレイヤーを入れ重くなりすぎないよう調整する
藤川さん:チャイボーグのヘアスタイルは、顔まわりをリバースで巻いた大きく緩やかなウェーブがポイントの“ワンホン(网红)へア”が基本です。カットでは毛先に厚みを持たせ、パツッとした毛先にスタイリングで大きなリバースカールがかかることを計算して仕上げていきます。さらに、表面がパサパサして見えないようにしっかり枝毛をカットするのがポイント。ここでどれだけきれいに表面を整えるかが、チャイボーグで重要な艶感につながります。また、全体が重めなアウトラインなので、顔まわりや表面に少しレイヤーを入れて重くなりすぎないよう調整しましょう。
前髪は厚めにパツッとそろえる、シースルーバング、かきあげるなど、どのスタイルでも構いません。一人ひとりの髪の長さや希望に合わせて似合わせましょう。
今回は前髪を伸ばしたいという大屋さんの希望と、より華やかな印象に仕上げることを意識して、巻いたときにサイドとつながるよう少しカットして奥行きを出し、センターパートにしました。
スタイリング①:カジュアルだけど上品なゆる巻きに
藤川さん:チャイボーグの特徴は、西洋のミックス巻きとは異なり、全体を均一にリバース巻きにすることで、「面」で見せること。32〜38mmの太いコテを使って韓国風よりもゆるい巻きを作り、素の動きを表現します。巻いているけれど崩れていない、ストレートに近いけれど、少し柔らかなウェーブで動きを出すイメージです。大きなウェーブ感を出し全体を均一にするため、スライスは細かく取りすぎないようにしましょう。
今回は、32mmのコテで全体に大きなウェーブを作り、大人らしいゴージャスな印象にしました。コテの温度は140度。全体はコテを立ててリバースに巻いていき、腰まであるロングヘアの中にも動きを表現するため毛先のみコテを横にしてくびれを作りました。
藤川さん:顔まわりはその人の顔型や雰囲気、前髪の形に合わせて巻き加減や角度を調整します。今回は毛先にワンカールをかけ、ウェーブを描きながら横につながるようにして艶やかさを引き立てました。さらに、ドライ、コテの巻きの角度、スタイリングすべてにおいて前髪の根元をふわっと立ち上げることを意識しています。
スタイリング②:スタイリング剤でパサつきを抑え、しっかり艶感を引き出す
藤川さん:チャイボーグのニュアンスを引き出す上で欠かせないのが、仕上げのスタイリング剤。ポイントは「パサつきを抑える」「圧倒的な艶感」「重くなりすぎない」こと。艶といえばオイルを連想しやすいですが、ベースからオイルで整えてしまうと重くペタッとした印象になってしまいがちです。そのため、ベースはミルクなどで素の印象に近いサラッとした軽さを出しながら整えつつ、パサつきを抑え、その上から艶感を加えるのがおすすめです。
今回は『バレエメロウ』で、素髪のようなサラッとした軽さを出しながら整え、そこから艶感と毛先の動きをより表現するために『モダンシマー』を重ねていきました。さらに艶出しのスプレーを吹きかけるなどして、とにかく艶感を引き出していきます。
キリッとクールに似合わせるメイクのポイント
SAKURAIさん:チャイボーグメイクでは、全体にキリッとクールな印象にするのがポイントです。今回はモデルさんのかわいらしい雰囲気を生かしながらも、全体的に一つひとつのパーツをシャープな印象に近づけるよう意識しました。
ファンデーション:首との色のつながりを意識
SAKURAIさん:チャイボーグを取り入れる上でファンデーションを使う場合は、薄づきで手軽に仕上がるクッションファンデがおすすめです。よりサイボーグのような隙のなさを表現するなら、白に近い色でしっかり塗るといいと思います。ただし、ファンデーションを厚くしすぎたり明るい色にしすぎたりすると、首と顔で肌色が合わず不自然になってしまいます。ファンデーションをしっかりめにする場合も首との色がつながるように意識しましょう。
大屋さんは非常にキメ細かく透明感がある肌だったので、今回はあえてファンデーションを使わずにその瑞々しさを生かして抜け感を表現しながら、髪の艶とのバランスを取りました。UVケアのできる化粧下地を塗り、少し赤みがある部分を薄いファンデーションで整える程度にしています。
眉・アイメイク・リップ:赤みを取り入れる
SAKURAIさん:チャイボーグの特徴は、目元・眉が強い意志を感じるシャープなメイクであること。そして、赤みの効いたカラーを使うことです。また、まつげの長さを出してしっかりカールを付け、華やかさとクールな印象を引き出します。
今回は眉を太めでシャープにし、アイメイクにはピンクベージュの髪色、服装、肌なじみを考慮してオレンジブラウンを取り入れ、チャイボーグの赤みの効いた印象に近づけながらも濃くなりすぎないように意識しました。目元は二重幅に合わせたオレンジブラウン系のアイシャドウに、ゴールドのアイラインで目尻に印象を付けます。まつげは髪色に合わせたボルドー系のマスカラをしっかり付けて長さを出し、ビューラーでしっかりと上げました。
SAKURAIさん:暖色系のアイシャドウは今回使用したもののほかに、アディクションのオレンジ、ピンク系がおすすめ。また、セザンヌやキャンメイクなどのプチプラコスメも発色良く、ラメ感もしっかり出てくれるので使いやすいですね。
チャイボーグのポイントを取り入れて似合わせた“クールかわいい”スタイルが完成!
最後に藤川さんから、今回チャイボーグのニュアンスを取り入れた、似合わせスタイルを施術いただいた感想と、チャイボーグを取り入れていきたい美容師さんに向けたアドバイスをいただきました。
「美容師さんの中にも『チャイボーグは聞いたことも見たこともあるけれど、どこがポイントなのか、どうしたら作れるのかは分からない』という人もいるのではないでしょうか。けれど、新しいスタイルがトレンドとして注目されるのには理由があるはず。トレンドのスタイルのポイントを一つひとつ細かく分解して理解できれば、その要素を生かした提案や印象づくりを一人ひとりに合わせて行えますよね。
僕自身、今回の撮影でさまざまなチャイボーグのイメージを見てパーツごとの特徴やどのように隙のない美しさを作っているのかを改めて分析したんです。そして、部分部分にチャイボーグの要素を取り入れ、大屋さんの愛らしさを生かしながら艶やかな大人らしさも表現できる“クールかわいい”を目指しました。こういったトレンドの要素を取り入れながら一人ひとりに似合わせたスタイルを美容師から発信していけば、お客様にも『よりヘアスタイルを楽しもう』と感じていただけると思いますよ!」(藤川さん)
藤川和也Kazuya Fujikawa
bico / SEAM マネージャー
青森県出身。都内2店舗を経て2018年にbicoへ入社、2021年よりマネージャーを務める。ボブやショートを中心に、一人ひとりに合わせた「似合う色」「似合うカット」でナチュラルだけど目に留まるヘアスタイルを提案。世代に合わせた似合わせや、乾かすだけでおしゃれに決まる質感に定評がある。サロンワークはもちろん、メディアの撮影や外部サロンでの講師などでも活躍する。
Instagram:@bico_fuji
SAKURAI FUNA
bico hibi スタイリスト
帯広市出身。2018年にbicoへ入社、bico hibiの配属となる。bico hibiのファッショニスタ的な存在で、個性を表現したおしゃれな服装と気さくな性格でサロンスタッフはもちろんお客様からも親しまれている。人と被らない個性派スタイルを得意とし、個性的でありながら生活に溶け込むヘアスタイルの提案に定評がある。
Instagram:@__fu.7gram__
「bico」サロン情報
札幌市内に「bico sapporo」「bico sisiter」「SEAM」「bico hibi」の4店舗を展開。全店舗全室半個室、緑の多い広々とした空間で、リラックスできる特別な時間を提供するサロン。「美容で気分を上げる」をコンセプトに、日常に溶け込むおしゃれできれいなヘアスタイルを提案している。
店舗展開 | 札幌市内に4店舗 |
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従業員数 | 41名 |
サロンコンセプト | 「美容で気分を上げる」 |
サロンターゲット | 20代〜大人女性まで幅広く、美容に関心の高い方 |
取材協力いただいた店舗
bico hibi
住所:〒060-0061
北海道札幌市中央区南1条西3丁目
エムズサッポロビル4F
Webサイト:https://www.hanico.jp/salon
(取材・文/A PRESS編集部、撮影/uruku 菊地紘一)
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